DMCラボ・セレクション 〜次を考える一冊〜

僕個人はコピーライティングや映像の企画を中心に、コミュニケーション全体のプランニングをなりわいにしています。たしかにコピーも企画も大好きだけれども、さすがに好きなことだけ!を仕事にしてるとは言い切れません。ある日ツイッターのタイムラインに流れてきたこのタイトル『スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営』(日経BP社)が、あまりに潔く、そそられたので、読んでみることにしました。

スノーピークは、いま世界中から注目される日本の地方発アウトドアメーカー。好きなことだけ!を仕事にするってどういうこと? そんなこと本当にできるの? 誰しも疑問が生じるところかと思いますが、結論から言うと、どうやらできるみたいなのです。とてもシンプルで美しい思想がそこにはありました。キャンプに全く興味のなかった僕が、気付けばすっかりスノーピークファンになってしまったのです。

マーケティングはしない。「好き!」を競争力にする戦略


スノーピークの社員は、社長を筆頭に、年間何十日もキャンプするほどの熱狂的なアウトドア愛好家。メーカーである前に、突き抜けたユーザーであるからこそ、ユーザーがどんなキャンプ用品を本当に欲しいのか?アウトドアユーザーにとっての感動とは何なのか?が分かるそうなのです。


スノーピークは海外でもビジネスを展開しているので、世界各地のアウトドアメーカーの経営者と話す機会があるが、自分よりもキャンプの泊数が多い人にはいまだに会ったことがない。そんな私が社長としてシビアにレビューして、開発陣も自分たちのほしい製品をきちんと作る。自分たちで徹底的にキャンプをしながら製品を開発しているからこそ、強風でもびくともしないテントができるし、徹底的に使い勝手のよいギアが生まれる。ここに他社との大きな違いがある。(P28)


市場や競合の状況に対してどう手を打つかではなく、ユーザーである自分たち自身が欲しいと思う、まだ世の中にない製品をつくり続ける。山井社長の「マーケティングはしない」という、一見戦略とは無縁の断言は、「好き!」を競争力にするという骨太な戦略の表れなのだと思います。

これは広告づくりに置き換えれば、いい広告をつくるには、その商品をまず好きになることが何より大切、ということだといえるのではないでしょうか。好きになった経験があるからこそ、生活者の心が動くポイントが分かる。当たり前といえば当たり前ですが、意外とできていない場合もあるかもしれません。自戒も込めて。

まさかの永久保証。


そんなスノーピークのものづくりを象徴するのが、永久保証、です。製造上の欠陥にまつわることであれば、期限は一切なく、いつまででも保証が効きます。他社メーカーではあり得ないようなことを実現した裏側には、山井社長の強い意志があります。


私がユーザーとしてアウトドア製品を使うとき、「嫌だな」と感じるケースは大きく分けて2つある。1つは製品が壊れること。もう1つは使い勝手が悪いこと。そして、ユーザー目線に立って「そんなものづくりはしない」と決めている。私はこの考えを顧客にしっかり伝えたいと思っているが、「強固に作っている」「革新的な製品だ」とどれだけ言っても、なかなか伝わらない。むしろ差別化するには「永久保証つきだ」と短い言葉で完結に表現したほうが顧客にとって分かりやすい。(P57)


自らもユーザーの立場に立てば、保証が1年や2年で切れてしまうのはおかしい。ユーザーにとことん誠実に向き合うという精神を貫いた結果生まれたサービスが、永久保証なのです。それは単なるお客さまへの奉仕ではなく、スノーピーク品質の価値をたった4文字で強烈に訴求する、優れたコピーだとも思います。

全ての源はミッションにある。


好きをエンジンにしながら、明快な行き先を持つのがスノーピークです。それが「自然志向のライフスタイルを提案し実現する」というミッションステートメント。ミッションといえば、崇高な言葉は存在するものの実際に社員がその言葉を意識して働いているかといえば、そうではないという企業も多いのではないでしょうか。スノーピークは全く違います。


もし、「目指すべき方向がはっきりしていない」「経営理念があるけれど、社員はほとんど信じていない」「ミッションを額に入れて飾っているが、社内で重視していない」といった会社があるとしたら、あまりにも、もったいない。(P12)




企業である以上、売り上げがアップするかどうかは経営者として最後には考えなければならないが、それ以前に社会的に意義がある事業を行っている意識がスノーピークにはある。この思いを社員と共有することが、仕事への高いモチベーションの維持につながっている。(P36)


自然と人をつなぐ。現代社会で生きる人たちが、自然の中で人間らしさを取り戻すお手伝いをする。その大きな志に共鳴した社員が力を結集し、日々新しい製品やサービスが生み出されているのです。強い覚悟のもと生み出されたミッションがあるからこそ、多少の市場変化に惑わされず、スノーピークはスノーピークらしい価値を生み出し続けることができるのだと思います。

さて、「好きなことだけ!」を仕事にするとは何なのか? 本稿ではその入り口だけご紹介させていただきましたが、本書にはスノーピーク経営の極意が実に惜しみなく書かれています。ユーザーとの交流、地場産業との関わり、販売の仕組み、その全てがミッションに基づいて展開されていることに驚かされます。好きなことだけを仕事にするという自由の裏には、大きな責任感と徹底的な追求があったのです。経営やマーケティング好きの方はもちろん、いま一度仕事の意味を考えてみたい、という皆さんにも、本当にオススメの一冊です。


Posted: 2017年2月23日 12:04 | コメント(0)

確率思考の戦略論

Book reviewer: 白石 正信 / Masanobu Shiraishi

こんにちは。高校までしか数学を触ったことがないバリバリの私立文系人間の白石と申します。そんな私ですが、周囲であまりに評判が良いので、年末におっかなびっくり本書『確率思考の戦略論/USJでも実証された数学マーケティングの力』(角川書店)を手に取ってみたところ、下手なフィクションよりもエキサイティングでページを手繰る手が止まらなくなり、勢い余って、遅ればせながら本稿にて(本書は昨年2016年6月に刊行されています)ご紹介します。

USJが驚異的なV字回復を実現させた「タネと仕掛け」


書籍版の帯には「世界屈指のマーケター&アナリストがUSJに導入した秘伝の数式を公開」とあり、実際に巻末に全体の約6分の1を費やした数学モデルの説明があります。数学がお好きな方であれば、美しい数式に興奮することもあるのでしょうが、あいにく私にはそのような高尚な能力はございません...では、本書のどこがそんなにエキサイティングだったのでしょうか。


本書は森岡毅、今西聖貴の両氏による共著です。森岡氏はP&Gを経て2010年にUSJに入社、今西氏もP&Gを経て、森岡氏に請われる形で2012年にUSJに入社。お二人の獅子奮迅の活躍により「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」はここ5年間で著しいV字回復を見せ、毎年100万人という驚異的なペースで集客を増やし、2015年度に年間来場者数は1390万人に達します。5年前には730万人だったので、ほぼ倍増というとんでもない実績です。

この途方もない結果を「マジック(魔法)ではなく、本当はタネも仕掛けもあるマジック(手品)なのです」(P2)、「確率思考の戦略は(中略)種も仕掛けもある手品ですから、誰がやっても再現性があるのです」(P304)と言い切り、そのタネと仕掛けをひもといていくのが本書です。面白くないわけがありません。

もちろん、細かい部分は実際に本書に当たっていただきたいのですが、もし私のような「タイトル(=数学マーケティング!)で腰が引けてなかなか手を出せない」という残念でもったいない早とちりをしている方がいらっしゃれば、お伝えしたいことがあります。

マーケティング関連本としては前人未到の有用性と面白さ


私は本書は以下の四つのレイヤーによって構成されていると感じました。

①独自の見解に基づくマーケティング基礎理論
②現実の市場におけるケーススタディー
③理論を現実で実践するためのアイデアと心構え(力業含む)について
④意思決定を行う人間の覚悟と心の痛み、目的を達成した上でなお生じる苦悩について

①②はいわば「マーケティングの教科書」としての要素です。もちろんここに関してもP&Gで培い、USJで事に当たった際に活用したマーケティングセオリーや、実際に市場で起きた出来事が非常に分かりやすく解説されています。

しかし、私は本書にマーケティング関連本としては前人未到の有用性と面白さをもたらしているのは、これら①②があった上で、さらにその先に展開される③④にあると感じました。

理論上は正しいと思われる戦略を現実で実務として遂行する過程で生じるさまざまな問題や障壁をあらゆる手段を用いて全力で乗り越えていく③、正しい意思決定を行うために心を鬼にして情緒を排し成功確率の高い戦略を選び取る覚悟や、その結果、成功したとしても反発をする人も必ず出てくることから生じる④。このドラマチックな部分までを含めて「マーケティングという仕事」なのだとお二人は伝えたかったのではないかと勝手に感じ入っています。

USJが社運を賭けた「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」の需要予測に関するエピソードをご紹介します。この需要予測は森岡氏自らも行うのですが、より確度を高めるためにかつての盟友・今西氏にも別の考え方での需要予測を依頼します。具体的な方法はお互いに言い合わないように注意しながら、それぞれが分析を行い、ついに迎えた結果を見せ合う日。二人は互いに手のひらに自分が信じている数字を書き、それを同時に見せ合います。二人の予測はほぼ一致していて、お互いにニヤリと笑う...まさに映画やドラマのワンシーンのようなカッコ良さです。

日本人が、マーケティングに携わる人間が、持つべきもの


終章で森岡氏はこのように書かれています。


私にとって、本書はずっと以前から最も書きたかった本でした。これからの日本にとって、最も重要だと考えていて課題に対して、自分なりの考えを広くお伝えしたかったからです。その課題とは「日本人は、もっと合理的に準備してから、精神的に戦うべき」ということ。その1つの答えになる、我々が培ってきたノウハウを広く知っていただく機会が本書の出版なのです。(P304-5)


日本人は合理性よりも情緒や共感性を重んじる傾向がある、とよく言われます。なので、もっと合理的思考を身に付けよ!と続くわけです。それは正しく、市場が世界に広がり、イノベーティブな製品やサービスが海外からどんどんと流れ込んでくる中でますます日本人にとって必要になることは間違いない。一方で、精神的なあり方もそれと同等か、それ以上に重要で、イノベーションを起こす人はいつだって皆覚悟や情熱や狂気に溢れています。本書では前述の①②で合理的な思考法ついてレクチャーした上で、③④で精神的なあり方についても語ってくれています。まさしく、マーケティングに携わる人が持つべき「合理」と「精神」、両方に関して余すところなく書かれていると言えるのではないでしょうか。

本書が世に出ることでマーケティングという仕事が活性化し、日本の経済が今までよりもいくらか豊かになることも著者の二人は数学的に予測していて、今はその推移を観測しているのかもしれない、そんな気持ちにすらなる本でした。

ぜひ、手に取ってみてください。


Posted: 2017年1月26日 10:28 | コメント(0)

困りました。非常に困りました。とてもおもしろくて夢中になって読んだのですが、コミュニケーションの本質を語る言葉の鋭さのあまり、気付けば付箋だらけになってしまっていて、引用だけで本稿の枚数が尽きてしまいそうだからです。

今回ご紹介する一冊『広告をナメたらアカンよ。』(宣伝会議刊)は、「ココロとカラダ、にんげんのぜんぶ」「変われるって、ドキドキ」「未来は、希望と不安で、できている。」など、きっと皆さんもご存じの(個人的にもとても好きな)コピーを書かいているコピーライター/クリエーティブディレクターであり、現在は大学で教壇にも立つ山本高史氏の著書です。

「時代/社会/人間」の視点で広告を読む


本書は、「わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい」から「みんながみんな英雄。」まで25の広告を「時代/社会/人間」の視点で読み解くことでコミュニケーションの本質に迫っていきます。

著者は、「時代/社会/人間」における受け手と送り手の合意から広告が導き出されていると説きます。


送り手がその「時代/社会/人間」を受け手と共有し、より豊かに深く認識・理解していることで、受け手の共感性の高い、つまり彼らの状況に対して最適な(広告効果を最大化する)提案を行えるのである。(P38、39)


例えば、2000年のトヨタカローラの「変われるって、ドキドキ」という著者のコピーは


「21世紀を直近に控えた時代に/ITを核に変化を始めた日本社会において/これからを模索する50代を中心とする大人」という受け手の状況に対して送ったメッセージである(P36)


といいます。この視点で古いものから新しいものまでさまざまな広告を読み解いていきます。

「営業」が「クリエーティブ」を読むとき


広告会社の若手の「営業」が、「クリエーティブ」関連の本を読む動機はだいたい、クリエーティブプレゼンで営業としても気の利いた一言が言えるようになりたいか、テレビCMの撮影現場で「今の良かったですね!」と自信を持って言えるようになりたいか、クリエーティブメンバーとのブレストで同じところで笑えるようになりたいか、広告業界で働いているということを思い出したいかのどれかだと相場が決まっています(笑)。

ただ、お世辞にも自ら若手とはいえない「営業」の自分が本書を手に取ったきっかけは、まさに目の前で制作している広告と、「営業」が日々の業務の中で積み重ねるコミュニケーションそのものとの関係性が気になりだしたからです。


言葉は、送り手が受け手を自分の望む方向へ動かそうとするものだ。それを叶えようとするのならば、「受け手の言ってほしいことを言ってあげる」必要がある。「受け手の言ってほしいことを言ってあげる」とは、なんとも善良な字面ではあるが、その実は「送り手が自分の欲望を満たすために、受け手の欲望を叶えてやる」ことに他ならない。(P181、182)


この言葉は、広告制作についての言及ですが、日々のクライアントやチームメンバーとのやりとりにおいて「営業」こそが意識すべきコミュニケーションそのものの本質ではなかろうか、とふに落ちました。

そんなふうに、今一度「広告」そのもののことを考えている現在の自分にとても響いた切れ味の鋭いフレーズをもう一つだけ紹介させてください。


広告が欲望を煽ることに眉をひそめる向きもあろう。しかし欲望が露わな世の中は、ある意味健全である。欲望がない、もしくは欲望が抑圧された社会になど、暮らせるもんか。(P259)


「営業」として広告制作の現場にいると、この商品をひとりでも多くの人に届けたい!というクライアント側の欲望ばかりに視点が向きがちになってしまいますが、そもそも商品が売れるということは生活者の側の欲望をかなえることにもなるということなのだと、当然のようで、とても深い本質を再確認させられて、ハッとしました。

「広告をナメたらアカン」理由とは?


「いいコピーとは、どんなコピーか?」と問われたら「売れるコピー」と即座に回答するという著者の筆致は「営業」としても心地良く読み進められます。

著者とは少し異なる視点かもしれませんが、個別最適化だとか、One to Oneマーケティングだとか、「広告」ではなく「個告」だとか叫ばれている今という時代の広告業界において、それでもクライアントの皆さまには「やっぱり広告をナメたらアカンな」と感じ続けてもらいたい。そんな「営業」として、(自戒の念も込めて)シビれた一節は、「おわりに。」に記された以下のメッセージです。


「広告をナメたらアカンよ」とは大きく出たものの、まあナメてもいいんです、広告だから。ホントにナメちゃアカンのは、コミュニケーション。
空っぽの言葉を使うな、うわべだけのメッセージを送るな、何よりも言葉を壊すな、ます他人のことを考えろ、言葉は、知恵や知識や知見や経験や社会観や人間観や愛情や情熱や情念や希望の産物である。そんなことも考えないで広告をナメるな、ということです。(P393)


チームのメンバーと、クライアントと、ひいては家族とコミュニケーションするとき、自分が発する言葉を見つめ直して、また明日からも「営業」という仕事と向き合っていこうと思いました。


Posted: 2016年12月26日 09:19 | コメント(0)

7つのコミュニケーション戦略

Book reviewer: 川畑 茉衣 / Mai Kawabata

「コミュニケーションデザイン」「コミュニケーションプランニング」「マーケティングコミュニケーション」...

ここ数年で、肩書や組織名称に「コミュニケーション」と付くケースが非常に多くなったように感じます。

私自身も、普段はデジタルを中心としたメディアプランニングを行っていますが、名刺の肩書は「コミュニケーションプランナー」です。

というのも、ものや情報があふれ、生活者との接点も無数に存在している今、マーケティングも、クリエーティブも、メディアプランニングも、どのように生活者とコミュニケーションを図っていくか、という「コミュニケーション戦略」の中で、生活者を動かし、クライアントの課題を解決していくことが求められているためです。

"コミュニケーション"と一言で言うと、なんともふわっとした言葉に聞こえるのですが、まさに友人や会社仲間、 仕事相手などとコミュニケーションを取ることと同じで、相手のことを知り、理解し、受け入れてもらえるような関係を作ることがコミュニケーションであり、それを企業と生活者間で関係構築していくために重要なのが「コミュニケーション戦略」です。

今回の磯部光毅著『手書きの戦略論「人を動かす」7つのコミュニケーション戦略』(宣伝会議刊)では、「コミュニケーション戦略」を「人を動かす戦略」と捉え、そのための7つの戦略・手法が手書きの図とともに整理、体系化され紹介されています。


1.ポジショニング論:「違い」が、人を動かす。
お客さんの頭の中で、競合と違った位置づけを得る戦略。

2.ブランド論:「らしさ」の記憶が、人を動かす。
お客さんの頭の中に、そのブランドらしさの連想構造をつくり、記憶に残す戦略。

3.アカウントプランニング論:「深層心理」が、人を動かす。
お客さんの隠された本音を探りあて、動機づける戦略。

4.ダイレクト論:「反応」の喚起が、人を動かす。
お客さんの直接的な反応を受け止めながら、長期的な関係をつくる戦略。

5.IMC論:「接点」の統合が、人を動かす。
お客さんとの複数の接点をつなぎ、最適なメッセージ、施策を出し分ける戦略。

6.エンゲージメント論:「関与」が、人を動かす。
お客さんが自ら関わりたくなるような施策を通して、共感しあう関係をつくる戦略。

7.クチコミ論:情報の「人づて」が、人を動かす。
ソーシャルメディア上で、情報が信頼と共感をともなって拡散することを狙う戦略。


コミュニケーション戦略は7層構造のミルフィーユ

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『手書きの戦略論』より引用


本書では「コミュニケーション戦略」は、 時代の変遷に合わせて、変わったり、新たに生まれた戦略が積み重なっている状態であり、上記で述べた7つの戦略論が重なった"7層構造のミルフィーユ"である、(P.31)


と述べられており、それぞれの戦略論が生まれた歴史的な流れや背景が、過去の事例とともに紹介されています。


顧客の「頭の中」での位置づけを争う


例えば、7層の構造のミルフィーユのベースにある「ポジショニング論」。

これは、1960年代後半に生まれた戦略論で、お客さんの頭の中で、他社の製品やブランドと違う位置を占め、この「違い」で人を動かす戦略論です。

昔は、世の中にないものを作ったり、モノの機能やベネフィットで競合と差別化を図れば良かったものの、今やどの市場も成熟し、スペック面での差別化が難しくなっています。その中で、顧客のニーズをくみ取りながら、自社ブランドにとって有利に働く競争軸を発見し、お客さんの頭の中で確固たるポジションを築く必要があるのです。


コンビニでどのお茶を選ぶか?


例えば、コンビニにお茶を買いに行っても、棚には何十種類ものお茶が並べられていて、まさに群雄が割拠している状況。味の好みはあるにせよ、どのお茶も総じておいしいですよね。

その中で、「このお茶!」と選んでもらうためには、まさにこの「ポジショニング論」が非常に重要であります。そしてこの「ポジショニング論」は二つの方法に分けられると本書では明言されています。


A:「オーバーテイク型」:既存の価値軸の中で競合に勝る違いをつくる
B:「カテゴリーメイク型」:まったく新しい価値軸を打ち立てて違いをつくる(P.58)


コンビニに並んでいるお茶たちに当てはめてみましょう。「オーバーテイク型」で言うと、味や成分、身体への効果など、顕在化したお客さんのお茶に対するニーズの中で他社よりも優れている点を推しだしていく方法と、「カテゴリーメイク型」で言うと、昨今人気を博している「トクホのお茶」だったり「瓶入りの高級茶」など、これまで市場になかった新しい価値軸をつくって、「新しい選択」を提示する方法とがあります。

このように本書では、7つそれぞれの戦略論が非常に分かりやすく、整理、体系化されているので、紹介されている戦略論を、現状の市場に当てはめてみたり、自身が向き合っている課題に当てはめてみたりすることで、俯瞰的にコミュニケーション戦略の全体像を見ることができるかと思います。

7つの戦略を頭に入れたうえで、課題や、ブランド・商品の特長、ターゲットなどに応じて、戦略を使い分けたり、組み合わせたりすることで、より自身のプランニングの幅を広げることができると感じました。

「人を動かすこと」に携わっている方であれば、読んで損はない、そんな一冊ではないでしょうか。


Posted: 2016年12月 5日 12:29 | コメント(0)

■見える化できる時代だからこそ、思考停止がまん延している?


―「KPI目標を達成するべく、全力でPDCAを回しましょう」―


デジタル時代のマーケティング業務において、 ①戦略とKPI設計、目標数字の設定 ②とにかく施策を実行 ③結果の可視化・レポーティング ④原因究明と打ち手の検討...といった、いわゆるPDCAサイクルがいたるところに浸透しています。


一昔前の「エイヤ!」なやり方に比べると、相当合理的になりましたが...、逆に私自身がさまざまなマーケティングの現場を見てきた中で感じるのは「PDCA病」のまん延です。


「病気? KPI目標達成に向けてPDCAに注力することの何が悪いのだ!」なんて、声が飛んできそうですが。ここで言いたいのは、PDCAのレールに乗ってさえすれば、他の可能性に目線を向けなくてよい、ある種の思考停止のような症状。これが至るところで起こっているのではないか、と私も個人的に危機感を持っています。


今回は『米軍式 人を動かすマネジメント』(日本経済新聞出版社)から、「優秀な人材と豊富な資源、完璧なPDCAサイクルを持った組織が、時としてなぜ簡単に負けるのか?」について、探っていきたいと思います。

 

■PDCAの病...敗北したイラク軍と日本企業の抱える課題

 


敗者は、訓練された兵士と高性能の武器を持ちながら敗れた。
勝者は、相手に実力を発揮させない「新たな戦い」で勝利した。(P.2)

 

湾岸戦争において、イラク軍が米国をはじめとした多国籍軍に敗れたという史実については省略しますが、イラク軍は当時、大変優秀な人材と武器資源を保有していたとされ、その上での「完璧な軍事戦略計画」があったといいます。

ところが、実際は多国籍軍に簡単に裏をかかれた揚げ句、現場の機能不全に伴い敗北。

 


「計画による管理」は、一歩間違うと悲劇的な結果を招きます。(P.16)

 

本書では先に述べた日本企業の「PDCA病」について指摘しています。計画と管理はもちろん適切にされるべきですが、優秀な人が多い組織ほど、計画とその完璧な実行に溺れ、時に大敗を喫すといったケースが増えているといいます。PDCAの持つ根本的な課題が昨今、あらわになっているのではないでしょうか。

 


某出版社では、編集者に「たくさん企画書を出せ!」と命じて、それを達成すべく「月にいくつ企画書を出したか」をKPIとしました。すると編集者たちは、つまらない企画書しか出せなくなってしまいました。(P.86)

 


「無理な販売予算」の達成に向けて値下げを始めた会社では、少しずつ売上総利益率(=粗利率)が低下していきます。(P.87)




そもそも無理なKPI設定や、本質を見落としている「お間抜けKPI」設計を行っているケースが存在するのは、なぜなのでしょうか。

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さて我々のビジネス界。多くの会社で組織のイラク軍化が進んでいないだろうか?
それどころか、計画と管理を強めすぎ、自らイラク軍化を進めていないだろうか?
だとすれば、一刻も早くそこから抜け出さねばならない。そのためのヒントが「機動戦」にある。(P.3)

 


■予測できない世の中だからこそ、変化を前提とした「機動戦」へ

 

「機動戦:Maneuver Warfare」と本書で呼ばれているこの概念は、いわゆる「消耗戦」に対して、いかに現場が自律的に考えて行動することが重要かを、端的に表しています。


日本でいち早くPOSシステムを取り入れたセブン-イレブンを、POSデータの海に溺れることの危険をいち早く気付いた企業として挙げています。データに表れない何かに対しても意識を向け、発注には人間自身が手間と時間をかけることの重要性を説いているそうです。


また、LINEの元CEO森川亮氏は、これまでさまざまな「計画」を元にしたマネジメントを実施していたところ、市場の変化が激しいデジタル業界では、頻繁に不測の事態が起こり「計画」を何度も変更するということが起きていたそうです。そうなると、社長は気分屋でついていけないだとか、逆に計画を出さなければ何を考えているか分からないだとか、さんざんの言われようだったとか。結果、最低ラインの示達数字と大枠の方針のみを事業リーダーへ伝え、あとは「任せる」経営を行ってきたといいます。

 


「想定される攻撃」に対して、適切かつ機敏に行動が取れること。
「想定外の攻撃」に対しても臨機応援な対応が取れること。(P.31)

 


この二点の間には実は天と地ほどの差が存在し、うち後者実現のためのフレームワークの可能性に本書では触れています。

 

■経営・マーケティングにおける「D-OODA」モデル適用の可能性

 

上記の機動戦をより実践的に落とし込んでいく上で、著者は「D-OODA(ドゥーダ)」モデルを提唱しています。「D-OODA」モデルのベースになっているのは、「OODA」フレームワークです。

 


「OODA」? あまり聞き慣れないと思いますが、実は機動戦の基本で「観察(Observe)→方向付け(Orient)→決心(Decide)→実行(Act)」の流れです。

 

このOODAフレームワークで、機動的な意思決定と実行のループを規定しつつ、目標設計段階フェーズにおいて、「正しい問題の設定」を行う「オペレーショナル・デザイン」手法との組み合わせを提唱しています。

 

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きちんと人が動く戦略と組織へ―。「オペレーショナル・デザイン」のキモは、「D-OODA」における「D(Design)」である下記の三つだと著者は解釈しています。


① 上司-部下の知識・知見を元にした『対話』
② 作戦の『大筋』の合意
③ 正しい『目標設定』、柔軟な『実行権限』 


なんて当たり前では!?と思われる方も多いかもしれませんが、これ、意外とないがしろにされてはいないでしょうか。
対話プロセスから始まり、多角的な知見集積から紡ぎ出される戦略は"腹落ち"するイメージがありますね。

 

■おわりに。〜打倒シン・ゴジラに見るD-OODAの威力!〜

 

はっきり言って、PDCAサイクルは非常に重要なフレームワークですし、私はそれを否定するつもりは全くありません。また、このD-OODAモデルといった考え方が、果たして本当に国内のマーケティング組織でワークするかどうかも、未知数です。


しかしながら、「D-OODA」モデルの可能性を非常に感じたのが、映画『シン・ゴジラ』です。


劇中では、ゴジラという国家危機に対して、これまでのPDCA的な組織対応ではなく、やむなく柔軟な「D-OODA」型組織対応へと変化し...と、これ以上はネタバレになってしまいますが、ご覧になった方にはすごく共感してもらえるのではないでしょうか。というか本当にすてきな映画でした。また、重要なことを忘れていましたが、言わずもがなヒロインの石原さとみさんはとてもすてきだと思います。


もしもこの先、現実のビジネスの世界でも「D-OODA」モデルが日の目を見るチャンスがあるとしたら...それは国家や企業がゴジラのような超危機的状況に相対するも、スクラップアンドビルドによって生き残った、まさにその時なのかもしれません。


以上、マーケティングの現場からでした。


Posted: 2016年8月27日 22:30 | コメント(0)

今回紹介するのは、世にも不思議なビジネス書です。
なにせ、累計2000万部を超える大ヒット作『暗殺教室』を生み出した漫画家・松井優征さんと、世界的に注目を集めるnendoを率いるデザイナー・佐藤オオキさんの対談本ですから。

松井優征、佐藤オオキ著『ひらめき教室 「弱者」のための仕事論』(集英社新書)です。

最初に、お二人を簡単にご紹介します。
まずは、松井優征さん。
今年7月、『暗殺教室』は完結を迎える第21巻が発売されたばかり。このマンガはアニメ化、映画化もされたので、ご存じの方も多いかと思います。実は『魔人探偵脳噛ネウロ』に続く連載2作目というのだから驚きです。

そして佐藤オオキさん。デザインファームnendoの代表です。大学では建築を学んでいたというバックグラウンドを持ち、現在はなんと約400ものプロジェクトを抱える大人気デザイナーでいらっしゃいます。

二人に共通するのは、広い意味でのものづくりです。
「ものづくりに関して考えることが、ほとんど共通している」(P.5)という佐藤さんの言葉通り、対談形式でつづられるこの本の多くがあうんの呼吸で進んでいきます。

ものを生み出す際、どんなことに気を付け、どんな流儀を持っているのか?

共にヒットを連発するクリエーターですから、その会話にはこれからの時代に求められるヒントが隠れているはずです。

 

まずは自分の弱さを認めるところから始めてみる

 

この本のサブタイトルにも表れていますが、大事なキーワードは「弱者戦略」。
最初は、「こんな売れっ子の二人のどこが弱者なんだ!」というツッコミ待ちかもしれないなと思っていたのですが、どうやら違いました。本当に、お二人は弱者としての自覚からいかにして勝っていくかをトコトン考え抜いて徹底しているのです。

 


松井:「自分に大した才能がない」が、僕の漫画家としての基本戦略なんです。
(中略)他に天才はゴロゴロいるんだと自覚するところから、本当の意味での漫画家人生が始まったんだと思います。
それでは大して才能がない人間がこの業界で生き抜くにはどうしたらいいか。そのためには他の能力を磨く。「生き抜くためなら何でもするぞ」という覚悟を持つ。そして考えて考え抜く。そういう姿勢を身につけました。(P.78-79)

 

自らの絵が下手であると実感させられた経験が原点にある、と語る佐藤オオキさんも同様です。自分の才能の無さ、弱点をまず認めてみる。そこから、周りを見渡して戦い方を考える。それを徹底する。
精神論に聞こえてしまうかもしれませんが、お二人にとって全ての原点であるように感じました。

 

「やりたいことがない」大歓迎

 

デザイナーも漫画家も、世間からすれば「自分がやりたいことを突き詰める」職業に見えます。ですがこの点に関してもお二人は独自の方法論を持っています。

「やりたいことがなくったって、いいじゃない」という考えなのです。

 


松井:やりたいことがあるかないかでいうと、僕はない方で、お客さんが求めるもの=自分のやりたいもの、という考え方なんですよね。

(中略)やりたいことがしっかりある人って、自分にはわりともろいように思えて。そのやりたいことがなくなってしまったら、そこから何も生みだせなくなってしまう気がするんですよ。

佐藤:確かに「やりたいことがある」は、やりつくしてしまって、完結してしまう恐れはありますよね。その点、「やりたいことがない」は、かなり持続性のあるモチベーションになります。何が来ても楽しめちゃいますし。(P.82)


なんて素直な意見なのでしょう。
先ほどの弱者戦略から続く考え方ですが、「世の中でやっていくにはこうじゃないといけない」という思い込みは捨てて、自分の弱点と向き合ってきたからこそ、逆に「何が来ても楽しめる」という強みを見つけられたわけです。

 

クライアントの先の未来を描けるかで、勝負は決まる

 

「お客さんの求めるもの=自分のやりたいもの」な姿勢は、佐藤さんも同じです。では、そのクライアントが求めている新しいアイデアは、一体どのようにして生み出されているのでしょうか?

 


佐藤:クライアントの問題を解決しようとするとき、マーケティングの発想で言うと、これまでこのクライアントが何をしてきたかを確認するんです。そうやって「過去」の情報を整理しながら、一歩先の「未来」を示す。(中略)

でもそういう問題解決の仕方だと、過去からの流れの延長線上でしかないので、アイデアとしての爆発力はない。(中略)自分の理想としては、まずポーンと先を見ちゃうんですね。

松井:すこし先ではなく、何段階か後の「未来」を見る?

佐藤:そうです。現状の問題に対する答えではなく、先にいくつも答えを想像してしまう。Aの1、Aの2、Aの3...その答えの中で、一番相性のいい質問に返ってくる。(P.108)


ポイントは、未来から逆算する思考法と、その未来を一つに絞らない柔軟さなのではないでしょうか。
本の中では、「きれいなハートを描いてくださいとクライアントに言われたら?」「新しい冷蔵庫をデザインするとしたら?」などなど、さまざまな思考実験が繰り広げられます。どれもこれも、両者から本当にユニークな視点で生み出されたアイデアがずらずら出てきます。きっと今ある課題やデータを追い続けるのではなく、ドラえもんのようにポーンと未来を描いてしまって「こんなのがあればいいのにな」と逆算で発想しているからこそ、他と違うユニークな視点が次々発揮されているのでしょう。

...ぜひ見習いたいところです。

 

「暗殺教室」を生んだマーケティング戦略

 

ちょっと個人的な趣味が入りますが、「暗殺教室」本当に大好きなんです。特に20巻と21巻は涙無くして読めませんでした。

この本を読み始めた一つの理由は、あの作品がどんなプロセスで生まれたのか、知りたかったのです。

ご存じない方のために本当に簡単に説明しますと、3年E組の生徒たちが謎の生物=殺せんせーの暗殺を目指す話です。ざっくりですみません。

一見すると、かなり異端児なマンガなのでは?と思ってしまいますが、松井さん本人は「普通の学校もの」「(野球に例えると)一球目だけ変化球で入って、あとはセオリー通りに組み立てているだけ」と、こともなげに語ります。

 


松井:ただ「暗殺」と一言加えて入り口を変えるだけで、全然別の世界が開ける。『暗殺教室』は自分の中で王道というかど真ん中に近いんですよね。今、王道を行く漫画が減っていて、隙間をつくような漫画が増えていまして。

(中略)もっと単純明快に、「あいつとあいつがやり合う」みたいな、すっきりとわかりやすく、多少ベタでもど真ん中の漫画が求められているんじゃないのか。『暗殺教室』を描く前ぐらいに、そう考えていたんですね。(P.27-28)


弱者戦略をフル活用して、今の漫画界をしっかり見つめて導き出された結論が、極めてど真ん中の王道を行く...というのが実に面白いところです。実際、『暗殺教室』はとても王道な学園モノ系であり、敵と戦って成長していくバトルモノでもあります。

弱者として自分の武器を磨き上げ、柔軟な発想と優れたマーケティング目線を兼ね備えたお二人のお話は、ただ読んでいるだけでもこちらの固定観念がどんどん崩されていくような感覚に襲われます。対談形式で読み進めやすい一冊ですので、みなさまぜひご一読を。


Posted: 2016年8月 5日 13:11 | コメント(0)

今回は『「売る」から、「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講義』(誠文堂新光社)を取り上げましょう。

水野学さんはグッドデザインカンパニー代表として、企業のロゴ制作、商品企画、パッケージデザイン、インテリアデザイン、コンサルティングまでをトータルに担うクリエイティブディレクター。熊本県のキャラクター「くまモン」をはじめ数々のプロジェクトを手掛けています。

本書は、そんな水野さんが慶応大学で実施している人気講義を書籍化したものです。

ブランドとは、見え方のコントロールである

 

タイトルにあるように、企業の商品やサービスが「売る」から「売れる」へ転換するためには、「ブランドを作る」ことが必要です。

本書では、この「ブランドを作る」ために、水野さんがデザインを武器にして実践しているノウハウが公開されています。

では、ここでいう「ブランド」とは何を指すのでしょう?

水野さんは「ブランドとは、見え方のコントロールである」(P.32)と定義されています。そしてそれを作るイメージは、世の中を驚かすような奇をてらったことをするのではなく、河原で石を積み上げていくような感じであるといいます。

 


石のひとつひとつはなにかというと、商品そのものであったり、パッケージデザインであったり、広告であったり、その店舗の空間デザインであったりといった、その企業のアウトプットです。企業が発信するアウトプットが、ブランドをかたちづくっているんです。(P.31)

 

たとえば、アップルというブランドは、見え方すべてがカッコいいと例に挙げられています。商品がカッコいいのはもちろん、ニューヨークや銀座にあるアップルストアやウェブサイト、広告から商品の梱包に至るまで、すべての見え方がコントロールされていて、そのおかげで「美意識の高さ」や「クリエイティブへのこだわり」が顧客にちゃんと伝わっているわけです。

見え方をコントロールできる人、それは...

こういった「見え方のコントロール」が「売れる」ために必要になのであれば、当然「見え方をコントロールできる人」が必要になってきます。

今、ビジネスの世界ではこの人材がすごく求められているのです。具体的にいうと、企業のトップと直接話し、そのやりとりの中で、コンセプトの方向性、商品のデザイン、広告の表現を依頼するパートナーの選定などを請け負う人です。

これは、ビジュアル管理やデザインの視点を持ち合わせつつ、クリエイティブ全般を判断するという広義のクリエイティブディレクション領域です。

ブランドをつくることが目的でのクリエイティブディレクションなので、広告表現だけでなく、「社会的な視野に立った戦略を構築できる」という意味でのクリエイティブディレクション、もっといえばクリエイティブコンサルティングともいえます。

そして、このポジションは求められているにもかかわらず、かなり人材不足のようなのです。

 


じつをいうと、ここでいっている意味でのクリエイティブディレクターという役職の席、クリエイティブコンサルタントといい換えてもいいかもしれませんが、この席が、いまずいぶんと空いているんです。ぼくの肌感覚でいうと、全部の席のうちのまだ1パーセントくらいしか埋まっていないんじゃないかと思いますね。いろんなところで、いろんな企業が、こんなにも必要としているのにもかかわらず、です。(P.40〜41)

 

水野さんは、このポジションを担うクリエイティブディレクターであり、クリエイティブコンサルタントというわけです。

手掛けた事例として、奈良の老舗生活雑貨「中川政七商店」や福岡の久原本家のだしのブランド「茅乃舎」などが紹介されています。

これらのプロジェクトでは、ブランドロゴをはじめ、商品タグ、紙袋、社用封筒から段ボール、あげくには新社屋のデザインまで、全方位の見え方をコントロールしているのです。

また、これらの見え方コントロールは、社員のモチベーションも上げる効果もあったといいます。当然、社員もカッコいいブランドで働いている方が誇らしく、やりがいを感じるでしょう。

 

クリエイティブディレクター、クリエイティブコンサルタントに必要なもの

 

このような見え方のコントロールを担うには、カッコいい見え方かどうか(狭義のカッコよさではなく社会や人々に受け入れられるの意)を判断できるセンスが必要になってくるでしょう。水野さんのようなデザイナー出身でなくとも、その役割を担えるのでしょうか?

本書には、このような説明がありました。

 


センスとは、集積した知識をもとに最適化する能力である。(P.53)
最適化は、知識があればできる。知識は努力すれば集められる。(P.217)

 

たとえば、ゾウの絵を描くというのは、ゾウの特徴を知っているという知識を元に自分なりに最適化する作業です。もっと詳しくゾウの特徴を知れば、描く絵もまた変わってくるはず。

要するに、センスは努力で知識を蓄えることによって身につくということです。デザイナーでなくても見え方のコントロールは担えるわけです。

実は数年前から、僕自身もこの領域の仕事がすごく増えてきています。

インターネットとソーシャルネットワークの浸透が企業ブランドに透明化をもたらしたため、広告は表面的な「お化粧」では機能しなくなりました。
広告はブランドの一端を担うコミュニケーションになり、そのブランドを作るには、企業の人格というものを、商品やサービスの検討前の段階から購買体験、アフター領域まで、すべての顧客接点で統一する必要が出てきました。

これは、水野さんの言う「見え方のコントロール」と同義で、まさに「河原で石を積み上げていくような」作業です。

水野さんはこのポジションが人材不足だと言っています。

ならば今後、このポジションを担うクリエイティブディレクター、クリエイティブコンサルタントがたくさん出てくれば、世のブランドはもっともっと活気づくんだろうなと思います。

なんだかワクワクしますね。


Posted: 2016年7月 8日 09:33 | コメント(0)

CMを科学する

Book reviewer: 白石 正信 / Masanobu Shiraishi

今回はデジタルインテリジェンス代表取締役の横山隆治氏による『CMを科学する』(宣伝会議)を取り上げます。

タイトルである「CMを科学する」。「科学する」とはどういう意味合いでしょうか。本書では「再現性を担保すること」と定義されています。取り巻く変数が非常に多く、効果を精緻に測定・検証することが難しいのが「テレビ」と、テレビで放送する広告素材「テレビCM」です。その広告効果の再現性を少しでも高めようとする試みの最新の状況が紹介されているのが本書です。

 

インターネットにつながれたテレビはすでに1000万台近くある

 

「デジタル」というキーワードが昨今の広告業界では騒がしく叫ばれていますが、本書では「デジタルマーケティング」を、「ネット領域だけに閉じたもの」ではなく、「マス・リアル・ネットの三領域をデジタルデータで統合し、顧客導線を最適化する」(P.176)ことと定義しています。

ネットとリアルについては、早い段階から、さまざまな行動データが取れるようになりました。一方で、最も影響力が大きいマスメディアであるテレビには「視聴率」という単一の指標しかありませんでした。また、テレビCMの評価方法も対象者に強制視認させた上でのアンケート聴取が主な手法で、人間の反応の95%を占めるといわれる「無意識下の反応」まで探るすべはありませんでした。

しかし、いまや国内のテレビは1000万台近くがネットとつながり、今後もオリンピックに向けた買い替え需要などで、ネット接続されたテレビ受像機の台数は増加すると予測されます。ネットとつながったテレビはパソコンやスマートフォンと同じデジタルデバイスなので、「視聴率」以外の詳細な視聴ログデータを取ることができるようになります。CM素材の評価に関しても、脳波を計測するなど、ニューロサイエンスによるアプローチで、無意識下の反応を測定する方法が開発されています。

つまり、今までは困難だったマス領域でもデータによる検証で再現性を高めることが可能になり、先述の「マス・リアル・ネットの三領域をデジタルデータで統合し、顧客導線を最適化する」ことが実現可能になりつつあるのです。

 

ニューロサイエンスによるCMの評価

 

ニューロサイエンスによるCM評価手法の可能性のひとつとして紹介されているのが、電通サイエンスジャムが開発した脳波から五つの感性(興味・好き・ストレス・集中・鎮静)を分析できる簡易型評価キット「感性アナライザ」です。

この感性アナライザ、私も実際に手に取ってみたことがありますが、非常に軽く、頭に装着することへのストレスはほとんどありません。今までは脳波を測るためにはMRIを使用したり、大型の脳波計を装着しなくてはならなかったのですが、そのような特殊な状態にあるということ自体が測定結果に影響を及ぼす可能性が高く、実際の視聴環境とは隔たりがあることが課題でした。その点を解消する可能性があるのがこのデバイスです。

電通サイエンスジャムでは、この感性アナライザと過去のCMアーカイブを活用し、視聴時の脳波データの蓄積からパターンを探ることで、「効果の高いクリエーティブ」をつくるためのヒントを見つけ出そうとしています。

(補足:感性アナライザはその機動性を生かして、さまざまなマーケティングの検証実験に用いられています。例えば、海外からの観光ニーズを探るために、観光客にガイドをつけた場合とつけなかった場合とで興味度がどのように変わるのかを検証したり、ファミリーレストランの店舗内でストレスがかかりやすい場所はどこなのかを明らかにし、店舗設計の改善に生かしたりしています)

また、ニールセンでも脳波測定とアイトラッキングを組み合わせたニューロマーケティング調査を行っており、「注目」「感情関与」「記憶」といった三つの指標で分析しています。

その分析結果から、脳波の反応の違いは年代や人種や国籍以上に男女の違いが大きいということや、CMで商品カットにさまざまな情報を詰め込みすぎると注意が分散して効果が半減してしまうこと、文脈やストーリーを無視して機能説明を入れてもスコアは落ちてしまうことなど、今までも肌感覚として想定されていたことが、実際にデータによって裏付けられています。

また、アンケート調査でブランド名をきちんと回答している場合でも、無意識下では競合ブランドを想起していて、長期記憶には競合ブランドが刻まれてしまっている、といった懸念すべき事態があることなども、ニューロマーケティング調査によってはじめて明らかになりました。

 

「CMが科学できる」時代の具体策

 

このようにテレビに関するさまざまな視聴データが取れ、CMについても無意識下の反応まで測定できるようになり、これからますます「CMが科学できる時代」になっていきます。

そのような変化の中、本書で提唱されている今までと大きく異なる考え方が「キャンペーンもいわゆる「アジャイル」(即時対応)型に」(P.144)です。


テレビCMのアクチュアル到達をリアルタイムで把握して、ターゲット到達が足りないと見れば、入札型の動画広告で補完していく。つまり「リアルタイムの運用で最適にする」(中略)消費者からの反応もリアルタイムで把握し、対応できるのであればキャンペーン期間中にも何らかの施策実行をするべきだ。(P.144)

 

そのために著者は「7:2:1」の予算配分を提唱しています。その内訳は、すでに効果が検証されているメディアや手法に7を、新たにチャレンジして効果検証すべきメディアや手法に2を、最後の1は前述の通り、キャンペーン中に生活者の反応や競合の動向に対応できるように見ておく予算、というわけです。

 

最後に

 

ここまで、「いまテレビとテレビCMに起きている大きな変化の概要」「ニューロサイエンスを用いたCM評価手法」「データを生かすためにキャンペーンもアジャイル型を推奨」といったトピックをご紹介しました。本書には他にも「新しく登場したテレビ視聴データ供給サービスの紹介」、「データの分析から得られた知見の事例」、また「日本以上に急速にテレビの視聴環境が変化しているアメリカの最新レポート」などが掲載されています。これからはじまる「CMが科学できる時代」に備えるために必携の1冊として、ぜひ手に取ってみてはと思います。


Posted: 2016年6月25日 13:59 | コメント(0)

「2020年までに先進国を中心に500万人の仕事が失われる可能性がある」
「これから小学校に上がろうとする子どもの約65%が今は存在していない職業に就く可能性がある」

今年のダボス会議で発表された、人工知能(AI)やロボット工学、バイオテクノロジーなどの科学技術の進歩によって上記のような未来が訪れるかもしれない、とした報告に、得体の知れない怖さのようなものを感じたのはきっと僕だけではないでしょう。

そんなことを思っていたころ、書店で見かけて、きっと難解なんだろうなと思いながらも、いささか挑戦的なタイトルに引かれて読み始めた一冊『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP社)を紹介します。

著者の入山章栄氏は、国内大手シンクタンクで調査・コンサルティング業務に従事した後、米国に渡り、2013年秋までの10年間に二つのビジネススクールに在籍して、まさに世界最先端の経営学の勉強・教育・研究に携わってこられたとのこと。

 

そもそも、「経営学」って役に立つの??

 

日々、現場で激務をこなすビジネスパーソンにとっては、「経営学なんか現場でホンマに役に立つんかいな??」というのがリアルな気持ちじゃないでしょうか。著者が本書を書こうと思ったきっかけはまさにそこにあったようです。

著者は、「経営学」に対してわれわれは大きく二つの誤解を持っていると言います。

 


誤解1.経営学者は「役に立つこと」に興味がある(P.26)
誤解2.経営学は「答え」を与えてくれる(P.32)

 

自分自身にとって、より納得感があったのは誤解2についての著者の見解です。著者が多くのビジネスパーソンとの交流の中で実感したのは、「経営学に『答え・正解』を求める」人は「もう知っているから役に立たない」とか「抽象的すぎて実務に応用できない」と感じがちということ。ですが、「経営学を『思考の軸』と捉える」人は、自社で取り入れている具体的な施策の是非を論理的に確認したり、目新しい知見に対するときの軸・羅針盤にして実務への思考を深めたりするものとして、経営学を使っているというのです。

 


航海に出るとき、羅針盤は方角を示すだけで、「どうすれば一番早く安全に目的地に着けるか」は決して教えてくれません。(中略)では航海に羅針盤は不要かというと、もちろんその逆です。羅針盤があるからこそ、それが航海ルートを決める軸となり、その上で風を読み、潮の動きを読み、天候を読むことで、経営に最善と思われる方向を見つけ出すことを手助けしてくれるのです。(P.37)

 

「チャラ男」と「根回しオヤジ」こそが、最強のコンビである

 

羅針盤の例えには納得したけれども、やっぱり経営学の本だけに読みづらいのでは...と心配することなかれ。目次を見れば一目瞭然です。自分自身が日頃の実務体験と照らし合わせて印象に残ったいくつかの章をピックアップしてみます。

 


第7章 「チャラ男」と「根回しオヤジ」こそが、最強のコンビである
第8章 組織の学習力を高めるには、「タバコ部屋」が欠かせない
第9章 「ブレスト」のアイデア出しは、実は効率が悪い!
第11章 真に「グローバル」な企業は、日本に3社しかない
第14章 男性中心職場での「できる女」の条件
第16章 成功するリーダーに共通する「話法」とは
第20章 日本の起業活性化に必要なこと(2)サラリーマンの「副業天国」
(P.6〜9)

 

本書における「チャラ男」とは異業種交流会や勉強会などに積極的に参加したり、積極的に名刺を配って人脈を広げるようなフットワークの軽い人のことを指しているのですが、社内で売り込むといったアイデアの実現には「チャラ男」だけでは成立しません。「イノベーション」と「クリエイティビティー」の違いをゴールとプロセスであると認識できれば、新しい知の組み合わせによってクリエイティビティーを発揮しやすい「弱いつながり」の人脈を多く持った「チャラ男」と、アイデアを実現させるために必要な「強いつながり」の社内人脈を多く持った「根回しオヤジ」(目利き上司)のコンビこそが組織の創造性を高めるためにも今の日本企業に必要である、と主張しています。

自分自身、社内外問わず「弱いつながり」であっても人間関係を大切にしたい、また、新しい出会いに対しても常にオープンな姿勢でありたいと意識しながら日々の業務に取り組んでいるつもりなので、時々「チャラい」とやゆしてくるチームメンバーに本書完読を強く勧めようと思いました(笑)。

若干キャッチーにつけられたとも思われるこれらのタイトルに対する期待を裏切らないのは、その全てについて、経営学者たちが何百何千という企業データを使った統計分析や人を使った実験やコンピューター・シミュレーションをしたりして導き出した「真理に近いかもしれないビジネスの法則」であるからなのでしょう。一つ一つの詳細についてはぜひ本書を手に取っていただければと思います。

 

「不確実性」に満ちたこれからを生き抜いていくために

 

終盤の第21章では「イノベーションのジレンマ」で有名なハーバード大学クリステンセン教授の論文が紹介されているのですが、個人的には本書のまとめの章のように感じてとても腹落ちしたので紹介しておきたいと思います。教授は、ジェフ・ベゾス(アマゾン)、マイケル・デル(デル・コンピューター)、ハーブ・ケラー(サウスウェスト航空)をはじめとした22人のキラ星のごとき著名起業家へのインタビュー調査から、彼らの思考パターンは以下の四つにまとめられると主張しています。

 


(1) クエスチョニング(Questioning):現状に常に疑問を投げかける態度
(2) オブザーヴィング(Observing):興味を持ったことを徹底的にしつこく観察する思考パターン
(3) エクスペリメンティング(Experimenting):それらの疑問・観察から、「仮説をたてて実験する」思考パターン
(4) アイデア・ネットワーキング(Idea Networking):「他者の知恵」を活用する思考パターン
(P.280,281より一部省略して引用)

 

本書で「世界最先端の経営学」として紹介されている論文のほとんどが2年以上前のものであるということは、上記のような新たな「知」がまだまだ生まれ続けているということですよね。まさに現実のビジネス世界のスピード感にリンクしているように感じました。毎日の実務の中で肌で感じる「スピード感」とダボス会議の報告にあるような「不確実性」に満ちたこれからのビジネスの世界において、「世界最先端の経営学の知」という羅針盤を持つことは、生き抜いていく勇気を持つことに近いのかもしれないと思いました。


Posted: 2016年6月 8日 18:42 | コメント(0)

『戦略がすべて』-24の方程式-

Book reviewer: 大木 天馬 / Temma Ohki

今回は瀧本哲史著『戦略がすべて』(新潮新書)を取り上げます。以前『ゼロ・トゥ・ワン』を取り上げた時に少し触れましたが、彼は中高の同級生です。当時はいじられキャラでしたが既にとてもクレバーで、今こうして活躍しているのもとても納得です。
東京大学法学部を出てすぐ助手になった後マッキンゼーへ、現在は京都大学客員准教授かつエンジェル投資家です。本人いわく本業は投資家の方とのこと。既に『僕は君たちに武器を配りたい』『武器としての決断思考』など、いくつもの書籍を刊行しています。

自らが戦略を考え、磨くためのツール


投資家をしているぐらいなので、がっつり資本を持っているのでしょうし、「自分が投資した案件は、必ず成功させなくてはいけない」をモットーにしているとのこと。そこまでの言い切れる男の語る戦略とは何か。

本書は、以下の章立てで具体的な昨今の事例を紹介・分析しながら24の「方程式」として戦略を示し、自らが戦略を考え、磨くためのツールとなっています。


I ヒットコンテンツには「仕掛け」がある
II 労働市場でバカは「評価」されない
III 「革新」なきプロジェクトは報われない
IV 情報に潜む「企み」を見抜け
V 人間の「価値」は教育で決まる
VI 政治は社会を動かす「ゲーム」だ
VII 「戦略」を持てない日本人のために

 

前書きはありません、I章からいきなり本題に入ります。巻末のVII章が前書きと後書きを合わせたものに近く、そこで彼の戦略の考え方が示されています。

 


つまり、戦略を考えるというのは、今までの競争を全く違う視点で評価し、各人の強み・弱みを分析して、他の人とは全く違う努力の仕方やチップの張り方をすることなのだ。(P.245)

 

この思想をベースに示されていく、どの方程式もそれぞれ興味深いのですが、私が特に共感したのはI章の「3.ブランド価値を再構築する-五輪招致の方程式」と、II章の「6.コンピューターにできる仕事はやめる-編集者の方程式」です。

 

五輪招致の方程式には、

 


プレゼンテーションにおいて、最も重要なのは、「聴衆が何を求めているか」ということである。そこから、内容と見せ方が決まってくる。(P.37)

 


「勝利の条件」は本質を見抜くことにある(P.38)

 

と、広告に携わる者としては、常に心に置くべき事が書かれており(なかなか周辺事情によって難しかったりもするのですが)、編集者の方程式に紹介されている

 


彼と書籍を作るときは、通常の書籍の作り方とは少し違う。まず最終原稿の倍ぐらいの原稿を作り、様々な想定読者にそれを見せる。その反応をもとに、内容の取捨選択を行うだけでなく、読者像の見直しなども行う。(P.71)


という、ヒットメーカーとして有名な編集者の、さすがここまでやるのかと思わせる手法はその姿勢からして学ぶべきと思いました。

変化をいち早く見つけ、未来を予測し投資を成功させる

 

瀧本氏自身の在り方、考え方として参考になったのは、ブルーオーシャン戦略にも類するが、もっと端的に強烈に表現した彼の好きな言葉や、

 


「楽勝でできることを、徹底的にやる」(P.95)

 

変化をいち早く見つけ、未来を予測し投資を成功させるために彼が行っていることです。

 


それは、イノベーション、さらに言えば、資本主義というものは、少数意見が、既存の多数意見を打ち破り、新しい多数意見に変わっていくプロセスにおいて最も大きな価値が生じるからである。(P.108)

 


だから私は自分の身近にすでに起きている小さな未来(可能性)をたくさん持っている・知っていることが極めて重要だと考えている。(P.157)

 

情報が爆発しその取捨選択が必須となった現代に、自分に都合の良い意見ばかり拾ってしまい真実を見誤らないようにすることは、大切な戒めと私も考えていましたが、彼は更に一歩進め、

 


むしろ「逆をとる」、すなわち自分の仮説と逆の考え方や事実を探し、それがどの程度信頼できるかという、反証的な視点で確認していく。(P.148)

 

ここまでやることで、これから起こるイノベーションを見いだし、投資でも大勝ちしていけるんですね。

個人的には以下の例が、具体的に誰を頭に置いて書いているのかが容易に想像できてニヤリとできました。

 


「同じ部活の人は同じようなキャリアを歩んでいる」(P.186)

 

でも、親が自営かそうでないかとか、もう少しいろいろな要素があるんじゃない?とか、あいつは反証になるよな、などとちょっと突っ込みを入れたくもなるのも同級生の業。

彼いわく、本来読書とは著者と意見を戦わせる格闘技であり、この書への批判も歓迎と巻末にも書いてありますし、今度肉でも食べながら他の章含め意見を戦わせてみたいと思います。


Posted: 2016年4月21日 10:26 | コメント(0)