DMCラボ・セレクション 〜次を考える一冊〜

LINEだけが知っている秘密の成功ルール『シンプルに考える』

Book reviewer: 五島 淳 / Jun Goto

今や説明不要の世界的サービス、LINE。たった数年で、登録ユーザー数は5億人を超え、超巨大プラットフォームへと成長しました。

 

そこまでいサービスなのだから、きっとその裏側では、腕エンジニアや、脳みそキレッキレのマーケターたちが、最新のテクノロジーやメソッドをフル活用して働いているに違いない...。

 

なんて勝手に思っていました、この本『シンプルに考える』(ダイヤモンド社)を読むまでは。はっきり言って、成功の陰に隠された強さの秘密は、そんな表面的なもので全くありませんでした。

 

たった一つの「シンプルに考える」ということ。LINEを成功に導いた前CEO森川亮氏が語る、本質を突きまくる思考術について、特に琴線に触れたトピックスをご紹介します。

 

差別化は狙わない!?


モノを作って売るということにおいて、必ずといっていいほど必要になってくる要素が、差別化。実は、LINEはその差別化を狙っていないと言うのです。「みんなと同じものを作って、うまくいくわけがないだろう」。そんな声が聞こえてきそうですが、これ本当なんです。


差別化を考えるとき、僕たちが見ているものは何でしょうか? ターゲットとしている商品であり、ライバル企業です。そこには、ユーザーがいないのです。(P.173)

 

 差別化を狙うよりも、ユーザーのことをもっと見るべきだ、そう語る森川氏。これは、つまり「差別化をしない」≒「みんなが求めているものを、誰よりも追求する」という意味とも取れないでしょうか。

 

インターネットの歴史に学ぶ、差別化の危険性

 

この差別化について、インターネットビジネスの歴史から、大きな示唆が見えてくると本書にはあります。

 

かつてYahoo!などのポータルサイトが成功を収めたところ、それと似たサービスで後追いする企業が続々と出現しました。いわゆるネットバブルです。しかし、それらほとんどのサービスはバブル崩壊とともに消え去りました。なぜでしょうか?それは「差別化を狙ったから」だといいます。要するに余計な機能をつけすぎたのです。

 

そんな中、急成長してきた企業もあります。GoogleやFacebookなどの後発企業です。彼らが何をやったかというと、先行者のもっとも価値がある部分、例えばgoogleであれば、検索にフォーカスをして、徹底的に掘り下げました。Yahoo!が提供しているサービスの中で、最もユーザーが求めているものが検索だ!と考えたわけです。

 

じゃあ、LINEはどうだったのか


LINEも同様に、リリース時には他にも似たサービスがたくさんあり、企画開発メンバーはそれらを全て調べ上げたそうです。そしてサービスを際立たせるために、もっと多くの機能を搭載することもできたといいます。

それでも差別化は狙わないという判断をしたのは、「スマートフォンのコミュニケーションで、最もユーザーが求めている価値は何か?」を考え抜いた結果だというのです。そうして、あえてテキストメッセージに絞られた、それもどこよりも手軽でスピーディーに、心地よくメッセージを送れるサービスが誕生しました。

 

森川氏は差別化なんてするなと言っていますが、逆にこれって究極の差別化なんじゃないかと思っています。「ユーザーが求めている部分にだけ、どこよりも真摯に向き合う」という差別化。これって簡単にはマネできないです。

 

差別化をしない勇気を持てるか


手前の話で恐縮ですが、私なんかは広告の企画の方向性などで悩んでしまったときには、商品のポジショニングマップを書いたりして、ついついそれだけで分かった気になっていたのですが...、本書を読んで海より深く反省いたしました。


表面的な差別化をせず、実際の生活者にとっての価値は何か?を掘り下げていく。そして、その先にド競合の商品があろうとなんだろうと、あえてど真ん中を突き進む勇気を持ちたい、そう思いました。

 

それでいうと、例えば合コンなんかでも、友人とキャラクターがかぶらないよう考えすぎた結果、中途半端な印象になってしまって上手くいかなかった...! なんてこともしばしばなのですが、ここでもやはり、あえて差別化しない勇気を持つべきなのでしょうか。

 

閑話休題。


本書は他にも「ビジョンはいらない」「仕組みでは成功できない」「イノベーションは目指さない」といった、森川氏の本質を突きまくる思考法で、一見世間で良しとされている事柄を全否定するかのような、刺激に溢れたエピソードが満載です。考えすぎで悩んだときや、うまくいっているようで何か違和感を覚えたときには、一度立ち止まって読み返したい、そんな一冊だと思いました。


Posted: 2015年7月 7日 18:51 | コメント(0)

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