DMCラボ・セレクション 〜次を考える一冊〜
- MONTHRY ARCHIVES

ジョジョの奇妙な冒険。

このもはや説明不要の大ヒット漫画の著者・荒木飛呂彦氏が初めて明かしたのは、これまで語られることのなかった漫画術...。もうこの宣伝文句だけで読みたい気持ちが止まらない、『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社新書)をご紹介します。

というのも、漫画術というタイトルだけで読まず嫌いになっている方が多いのではないかと思ったからです。もったいない。「やれやれだぜ...。」という承太郎の声が聞こえてきそうです。なぜなら、この本は次の時代を考えるビジネスパーソンに役立つヒントが詰まっているからです。

「漫画術?別に漫画なんて描いてないし描く予定もない」
「どうせクリエーターみたいな連中にしか関係ない本だろう」
「こう描けばヒットする?そんなうまい話あるわけない」

もしそういった気持ちで本書を未読スルーしてしまっていませんか。
漫画の本というより、生き方の本。
そして、物事の正しい見方を教えてくれる教養本。
そんな表現がピッタリなんです、実は。

 

■漫画は最強の「総合芸術」

 

冒頭から壮大に持ち上げた感がありますが、もちろん漫画の技術に関する記述が基本になっています。目次を見てみると...


はじめに
第一章 導入の描き方
第二章 押さえておきたい漫画の「基本四大構造」
第三章 キャラクターの作り方
第四章 ストーリーの作り方
第五章 絵がすべてを表現する
第六章 漫画の「世界観」とは何か
第七章 全ての要素は「テーマ」につながる
実践編その1 漫画ができるまで
実践編その2 短編の描き方
おわりに


「やっぱり漫画家向けじゃねえかwwww」と思われるかもしれません。ですが、著者は一貫して常に物事の本質を見抜こうとしています。この本の中で長年培ってきた発見を惜しげも無く披露しています。

漫画とは何か?
面白いとは何なのか?
面白さはどこから生まれているのか?

そうした本質と向き合う姿勢が、著者の語る「漫画は最強の総合芸術」といった名言にサラリと込められているのですから驚きます。

 

■漫画に隠された、面白さを生み出す基本四大構造

 

では、著者はどうやって漫画を作り上げているのか。

もちろん本一冊使って語られているので、たとえば最初の一ページの描き方や、キャラクターを具体化していく約60項目に及ぶ身上調査書、ヘミングウェイを分析して編み出されたストーリー表現術、「マイナスプラスゼロ」というストーリー構造の落とし穴...。挙げればキリがないのですが、大前提になるとも言える基本四大構造はマストチェックです。

 


実際に漫画を描くとき、常に頭に入れておくべきこと、それは、僕が漫画の「基本四大構造」と呼ぶ図式です。
重要な順に挙げていくと、
①「キャラクター」
②「ストーリー」
③「世界観」
④「テーマ」
(中略)
つまり、読者に見えているのは絵ですが、その奥には「キャラクター」「ストーリー」「世界観」「テーマ」がそれぞれにつながり合って存在しているのです。この構造は、いわば、ひとつの世界の営み、宇宙とも言えるのではないでしょうか。(P.47-48)

 

優れた仕事を連発するクリエーターには、独自の方法論がある。個人的にそう思っていろんな方の流儀をノートに書きためていますが、荒木飛呂彦氏のように順位までつけていらっしゃる方は珍しいです。

僕はここにとても感動してしまいました。王道と呼ばれる、時代を超えて愛される漫画の本質を徹底的に考え抜いたからこそ発見できた基本四大構造に、順位までつけるってちょっとおいマジか。どこまで突き詰めて考えてるんだろう...。

僕が冒頭で「生き方の本」と書いたのは、こうした著者の姿勢に震えてしまったからです。単に技術を磨き、知恵を巡らせるだけではない。どこまでも良いもののために本質を追求する姿勢...。
「おれたちにできない事を平然とやってのけるッ そこにシビれる! あこがれるゥ!」。これ、一度言ってみたかったのでここで述べさせていただきます。

 

■アイデアは、尽きない枯れない無理しない

 

アイデア...。
日々打ち合わせにプレゼンに資料作成に、一日のうち何度触れているか分からないこの言葉。そんなアイデアの生み出し方についても語られています。

 


アイディアが尽きるというより、自分の興味が尽きるからアイディアがなくなるのだと思います。よいアイディアは、自分の人生や生活に密着しているのですから、興味がなくなってしまえば生まれなくなるのです。(P.229)

 

だからこそ常に何かに興味を持ち、素直に周囲の出来事に反応していく。自分が興味ある分野を限定することなく、外れたものも無視しない。簡単なようで難しいことです。でも、本質だと思います。


アイデアに追われる毎日の中で、ついついひねり出そうと無理しちゃいそうになる自分の心に響きました。どこまでも本質から外れない、そんな荒木飛呂彦先生が描いているのだからジョジョは永遠に王道なのだな、としみじみ感じます。

 

■王道へと続く「黄金の道」を学んだら、目指すはその向こう側

 

本書で語られる方法論は、いわば時代を超え、誰からも愛される王道漫画へと続く「黄金の道」です。そんな企業秘密をなぜ明かしてしまうのか。

 


はっきりとここで言っておきたいのは、「黄金の道」とは、「漫画の描き方」のマニュアルではありません。
(中略)
僕が「黄金の道」として書いたことをそのまま実践しても、そこに発展はありません。
この『漫画術』を土台にして、さらなる新しい漫画や、パワーアップした漫画、あるいはまったく違っていたり、とてつもなく正反対の、この本を無視した漫画でもよいでしょう。そういったものをみなさんに生み出して欲しいと思って書いた本なのです。(P.280)

 

終わりに書かれた言葉は、あくまで漫画家を志す人へのメッセージです。でも、王道を目指し、「黄金の道」を編み出し、今いるところより先へと進歩していく姿勢はどんなビジネスにも共通して求められるものなのではないでしょうか?

自分自身、広告という漫画とは全く違う分野に身を置いています。
でもこの姿勢は心から尊敬できます。

荒木飛呂彦先生は、漫画を描き続けて40年。しかもこの密度で毎日を送っておられる。いつかそんな境地にたどり着けることを信じて、折にふれて何度も読み返したくなる一冊です。


Posted: 2015年6月25日 18:04 | コメント(0)

3分でわかる『明日のプランニング』

Book reviewer: 見市 沖 / Oki Miichi

「テレビは死んだ」「SNSでバズらせろ」「コンテンツマーケティングだ」「テクノロジーの時代です」「やっぱ15秒CMでしょ」。ぜんぜん違う主張が、あちこちから聞こえてくる昨今のコミュニケーション業界。

で、本当のところ、どうなん...?を、ひとつ上の視点から、圧倒的に分かりやすくまとめてくれたのが、本書『明日のプランニング』(講談社)だと僕は思います。申し遅れました、電通関西クリエーティブの見市(みいち)です。数年前、コミュニケーションデザインを志すきっかけを下さった、恩師さとなおさんの新著をご紹介します。

(以下、エッセンスと感じた論旨を、端的にまとめました)
 

「情報をよろこぶ人たち」と「情報をウザがる人たち」でプランニングを切り分ける。


2005年頃のネット社会の変化により、情報爆発が起こった。たとえば2011年のたった1年間で、人類史上の書籍情報量合計の「1921万倍」の情報量が流れた、というデータもある(P29)。日常的にネットを利用する人にとっては、まさに「情報洪水」。さらに2010年頃からのSNSの普及で、友人知人間の「仲間ごと」情報がネット上に溢れ、もはや世の中の情報は消化されきるわけもなく、ウザがられるようにまでなってしまった。

しかし!ネットを毎日は利用しない人が、5670万人(総務省情報通信白書2014第5章第3節 インターネットの利用動向)いる。日常的にネット検索を使わない人の数はもっと多い。いまだ国民の約半分は、およそ「情報洪水」とは無縁の生活。そんな彼らは、まだまだ情報をウザがることなく、喜んで受けとってくれている。

つまり、今この国には「とんでもない情報格差」が生まれている。これからのプランニングは、この「情報をよろこぶ人たち」と「情報をウザがる人たち」のどちらを相手にするかで、しっかりと分けて考える必要がある。

「情報をよろこぶ人たち」には、マスが効く


情報洪水と無縁の彼らは、そもそも回りに情報が少ないので、こちらからの情報を貴重なものとして受け取ってくれる。たとえば、テレビCMなどのマスアプローチがまだまだ有効。商品や企業に興味関心のない人であっても、表現のインパクトで振り向いてくれる。およそ1000万人規模だと思われる「マイルドヤンキー層」も、この情報をよろこぶ層に入ってくる。

「情報をウザがる人たち」には、友人知人が最強メディア


日常的にネットを利用するような人は、もはや情報をウザがる。こちらが伝えたい、たった「砂の一粒」の情報を伝えるなんてもはや不可能...。そんな「圧倒的絶望」の中でも、伝わるための方法がひとつだけある。それが、「友人知人」という最強メディア。

・情報が多すぎると、人は自分と価値観や環境の近い友人知人に頼る。
・有益な情報が探さずとも、友人知人からやってくる。
・SNSの普及で、友人知人つながりで情報がすばやく拡散する。
・スマホの普及で、24時間友人知人とつながった。

こんな強力なメディアは他にない。情報洪水の中でも、友人知人のコトバは、リアルで超関心事。その友人知人を通した間接的なコミュニケーションこそが、情報をウザがる人たちへの最強アプローチ。

態度変容を起こせるのは、ファンからのオーガニックリーチ


友人知人を通した間接的なアプローチといっても、ものすごくバズるウェブ動画! では、認知はとれても態度変容は起こしにくい。「面白い!この動画最高!」とはなるが、「買いたい!」にはなりにくい。ではどうしたら、態度変容を起こせるのか?

それが「ファンから友人知人へのオーガニックリーチ」。ファンの定義は、情報発信元に対して「興味関心を持っている人たち」から、熱烈な伝道者である「エバンジェリスト」まで幅広い。彼らが、彼ら自身のコトバで、友人知人になにかをオススメするのが「オーガニックリーチ」。オススメされた友人知人は「自分と価値観の近いこいつが言うんだから、きっと良いんだろう、買ってみようかな」と思う。このキモチを誘発するのが「砂の一粒」時代のコミュニケーション。

ファンからオーガニックな言葉を引き出す、7つの方法


ではオーガニックな言葉を引き出すには、どんな方法があるのか?

1. 社員という「最強のファン」の共感を作る。
SNSが普及したことで、社内の共感は、常に社外にも染み出している。

2.ファンをもてなし、特別扱いする。
新規顧客よりも、熱狂的なファンを特に大切にする。特別扱いこそが、彼らからのオーガニックリーチを生む。

3.生活者との接点を見直す。
たとえば、スターバックスのカップに書かれた、さりげなくも温かい手書きメッセージへの感動は生活者のファン化と、オーガニックリーチを同時に生み出せる。

4.商品自体を見直す。ファンと共創する。
次々と出る新商品は情報と同じくウザがられてしまう。GAPがファンの意見をもとにロゴを元に戻したように、ファンとの共創視点で考えてみる。商品開発など、直接的な共創も増えているが、その場合は熱狂的ファンを集めることが大切。

5.ファンを発掘し、活性化し、動員し、追跡する。
ファンの発掘方法は色々あるが、たとえば「この商品を友人に強く薦めますか?」を問うネット・プロモーター・スコア調査。点数の高い人にレビューを書いてもらったり、イベントに来てもらったり、定期的に意見を聞いたりして継続的な関係を築く。

6.ファンと共に育つ。ファンを支援する。
どんなに有名になろうとも、熱狂的ファンがあつまる秋葉原の小劇場から離れないAKB48。純粋にこの子を応援したい!という気持ちを、汲みとった様々な施策が実施されている。

7.ファンとビジョンを分かち合う。
CSRではなく、CSV(Creating Shared Value)。慈善活動的に社会貢献活動をするのではなく、しっかりと利益を出しながら、生活者とともに社会的な課題を解決する活動。

たとえばこの7つの方法がある。何はともあれ、これからはファンから「オーガニックな言葉を引き出す力」が、プランナーの大事な能力になる。

ただただ、伝えたい相手を想いやる


以上、大事なところ(だと感じる部分)だけ、僕なりにまとめてきましたが、本書では、もっと多くの考え方や具体例、また「とはいえこういうケースはこう」といった例外までたっぷりと書かれています。(たとえば、低関与商材なら情報をウザがる層でも直接リーチは有効、とか)。是非、今のご自分の仕事に照らし合わせながら、読み進めて頂くことをオススメします。

ちなみに本書ラストで語られるのが、ファンへ届ける表現の作り方。そこまでの話がファンへのアプローチの仕方だとすると、じゃあ具体的にどう語りかけるのか? という表現の作り方について。ここは読んでからのお楽しみ、ということで触れないでおきますね。僕はとても感じるものがありました。

さて、いろいろな手法が紹介される『明日のプランニング』ですが、さとなおさんがメタレベルで一番伝えたいことは、少々強引に言ってしまうと、実はひとつなんじゃないかと思います。

それは、ただただ、伝えたい相手を思いやること。
相手の喜ぶ顔を想像しながら丁寧にプランニングして、自分の言葉で語りかける。決して華やかではないけれど、そんな人間くさくて誠実なスタンスが相手を動かす、ということだと思います。仕事をしていく中で、ふと「広告だし目立てればいいや!」といった露出脳に陥りそうになるとき、いつもそこに立ち戻ろう。僕はそんな風に思いました。

(ちなみにこれは、ステマではなく「オーガニックな言葉」です)


Posted: 2015年6月11日 10:15 | コメント(0)