DMCラボ・セレクション 〜次を考える一冊〜
- MONTHRY ARCHIVES

ここ数年、テレビ東京が元気です。
過去は平均視聴率が他局に比べ低く、私自身も、以前まではアニメとゴルフとワールドビジネスサテライトが思い浮かぶばかりでした。また、例えば重大事件や事故が起きた際、他局では特番が組まれても、テレ東だけは何事もなかったようにアニメを流し続けていることがネットでネタにされるなど、独特のポジションのニッチなテレビ局というイメージを持っていました。

しかし最近は、随分7chを見る割合が増えました。映画にもなった「モテキ」(ブルーレイ持ってます!)、「孤独のグルメ」などは大好きで、地元の店が紹介された時は大喜び。選挙特番も、池上彰さんの容赦ないツッコミが楽しみで見るようになり、実際に2014年の「池上彰の総選挙ライブ」は民放の選挙特番の視聴率トップになりました。
こんな元気のあるテレ東の企画の秘訣をまとめた本が、今回紹介する濱谷晃一著『テレ東的、一点突破の発想術』(ワニブックス)です。 


予算がないなら、アイディアでカバーする

 

著者の濱谷晃一さんは、テレビ東京のドラマ制作プロデューサーで、「俺のダンディズム」「ワーキングデッド」「太鼓持ちの達人」など、異色のドラマを手がけられています。
僕も帰宅後テレビをつけて、「太鼓持ちの達人」を偶然目にして思わず引き込まれてしまったことをよく覚えています。

そして本書には、テレ東は制作予算が他局より少ないという記載が散見されます。広告会社的に言えば、ネット局数が少なく、視聴率も低め(だった)局には、どうしても獲得できる広告料が少なくなりますし、そうなると必然、制作コストも掛けられません。

 


「予算○○万円と聞いて、他局のプロデューサーが『そんな予算じゃ番組は作れない!』と言ったのに対して、テレビ東京のプロデューサーは『そんなに予算があったら、使い道がわからない』と言った」(P.14-15)

 

 例えば、「Youは何しに日本へ?」は、成田空港で来日した外国人をつかまえて話を聞き、外国人と日本の関連性を見つけ出しストーリーにする、海外に行かない海外バラエティー。通常の海外バラエティーで掛かる渡航費用はゼロです。その代わり、気の遠くなるような取材の数で稀にある面白いストーリーを見つけ出して番組にしているのです。


常にアイディアを出し続けなければならない人は、出すためのメソッドを幾つも持っています。そんなメソッド、ノウハウのいっぱい詰まったこの本の章立ては以下となっています。

 


テレ東のアイディア第一主義
アイディアに年功序列はない!
テレ東的、無理やりアイディア量産! 7つの秘訣
企画に「差」をつける7つの「さ」
「ない」から生まれるナイスな閃き
テレ東の注目Pに聞く発想術
偏差値29からのテレビプロデューサー

 

私も、アイディアの掛け合わせによる企画発想術は、行き詰まった時しばしば使っていたのですが、「テレ東的、無理やりアイディア量産! 7つの秘訣」の章には「なるべくかけ離れた2つのアイディアで掛け合わせる」「片方のアイディアを固定してもう片方にいろいろなものを掛け合わせて発想する」など、より効率的に発想するための大切なコツが記されています。

予算が限られていることも一つの制限ですが、あえて制限やルールを設けた方がアイディアを出しやすくなりますね。

偏差値29から一浪で慶應・早稲田に合格

 

更に「テレ東の注目Pに聞く発想術」の章では、「モヤモヤさまぁ〜ず」の伊藤隆行さんをはじめとする、テレビ東京でヒットを飛ばすプロデューサー6人にインタビュー。

テレビマンとして何をしたいかが分からなかったという、新人時代の伊藤Pが
「誰でも99%は凡人だ。でも1%の自分の中の天才を信じろ」(P.150)
という上司の言葉で吹っ切れた、など、身近な人だから聞けるエピソードが記されています。著者の発想術だけでも素晴らしいのに、そこに更に6人の発想とエッセンス、企画書の書き方・通し方まで知ることができるんですから、この本お得感半端ないです。

そして「おまけ」の最終章は、高校時代偏差値29から一浪で慶應・早稲田に合格したエピソードと、テレ東に合格した「"一点突破"の就職活動術」。

 


「自分の経験や選択をすべて志望動機に集約させること」(P.201)
これが理想の就職活動のプレゼンだ、というのに深く同意。私がOB訪問で志望動機を添削する時に指導することとほぼ一緒です。

 

各章の間には、「コラム 愛しのボツ企画」として、著者の考えたボツ企画が紹介されていて、クスッとさせられつつ、こんな企画も検討するんだ、そして諦めずこのような形でも日の目を見せるんだ、という執念に感心。

企画に悩む方は、自分の発想法を一回整理するためにも役立ちますし、発想法以外にも、ポジティブに仕事を進めていくため役立つ考え方・心構え・習慣が至る所にちりばめられています。面白くて一気に読めてしまうので、ぜひ手に取ってみてください。


Posted: 2015年7月24日 00:36 | コメント(0)

今や説明不要の世界的サービス、LINE。たった数年で、登録ユーザー数は5億人を超え、超巨大プラットフォームへと成長しました。

 

そこまでいサービスなのだから、きっとその裏側では、腕エンジニアや、脳みそキレッキレのマーケターたちが、最新のテクノロジーやメソッドをフル活用して働いているに違いない...。

 

なんて勝手に思っていました、この本『シンプルに考える』(ダイヤモンド社)を読むまでは。はっきり言って、成功の陰に隠された強さの秘密は、そんな表面的なもので全くありませんでした。

 

たった一つの「シンプルに考える」ということ。LINEを成功に導いた前CEO森川亮氏が語る、本質を突きまくる思考術について、特に琴線に触れたトピックスをご紹介します。

 

差別化は狙わない!?


モノを作って売るということにおいて、必ずといっていいほど必要になってくる要素が、差別化。実は、LINEはその差別化を狙っていないと言うのです。「みんなと同じものを作って、うまくいくわけがないだろう」。そんな声が聞こえてきそうですが、これ本当なんです。


差別化を考えるとき、僕たちが見ているものは何でしょうか? ターゲットとしている商品であり、ライバル企業です。そこには、ユーザーがいないのです。(P.173)

 

 差別化を狙うよりも、ユーザーのことをもっと見るべきだ、そう語る森川氏。これは、つまり「差別化をしない」≒「みんなが求めているものを、誰よりも追求する」という意味とも取れないでしょうか。

 

インターネットの歴史に学ぶ、差別化の危険性

 

この差別化について、インターネットビジネスの歴史から、大きな示唆が見えてくると本書にはあります。

 

かつてYahoo!などのポータルサイトが成功を収めたところ、それと似たサービスで後追いする企業が続々と出現しました。いわゆるネットバブルです。しかし、それらほとんどのサービスはバブル崩壊とともに消え去りました。なぜでしょうか?それは「差別化を狙ったから」だといいます。要するに余計な機能をつけすぎたのです。

 

そんな中、急成長してきた企業もあります。GoogleやFacebookなどの後発企業です。彼らが何をやったかというと、先行者のもっとも価値がある部分、例えばgoogleであれば、検索にフォーカスをして、徹底的に掘り下げました。Yahoo!が提供しているサービスの中で、最もユーザーが求めているものが検索だ!と考えたわけです。

 

じゃあ、LINEはどうだったのか


LINEも同様に、リリース時には他にも似たサービスがたくさんあり、企画開発メンバーはそれらを全て調べ上げたそうです。そしてサービスを際立たせるために、もっと多くの機能を搭載することもできたといいます。

それでも差別化は狙わないという判断をしたのは、「スマートフォンのコミュニケーションで、最もユーザーが求めている価値は何か?」を考え抜いた結果だというのです。そうして、あえてテキストメッセージに絞られた、それもどこよりも手軽でスピーディーに、心地よくメッセージを送れるサービスが誕生しました。

 

森川氏は差別化なんてするなと言っていますが、逆にこれって究極の差別化なんじゃないかと思っています。「ユーザーが求めている部分にだけ、どこよりも真摯に向き合う」という差別化。これって簡単にはマネできないです。

 

差別化をしない勇気を持てるか


手前の話で恐縮ですが、私なんかは広告の企画の方向性などで悩んでしまったときには、商品のポジショニングマップを書いたりして、ついついそれだけで分かった気になっていたのですが...、本書を読んで海より深く反省いたしました。


表面的な差別化をせず、実際の生活者にとっての価値は何か?を掘り下げていく。そして、その先にド競合の商品があろうとなんだろうと、あえてど真ん中を突き進む勇気を持ちたい、そう思いました。

 

それでいうと、例えば合コンなんかでも、友人とキャラクターがかぶらないよう考えすぎた結果、中途半端な印象になってしまって上手くいかなかった...! なんてこともしばしばなのですが、ここでもやはり、あえて差別化しない勇気を持つべきなのでしょうか。

 

閑話休題。


本書は他にも「ビジョンはいらない」「仕組みでは成功できない」「イノベーションは目指さない」といった、森川氏の本質を突きまくる思考法で、一見世間で良しとされている事柄を全否定するかのような、刺激に溢れたエピソードが満載です。考えすぎで悩んだときや、うまくいっているようで何か違和感を覚えたときには、一度立ち止まって読み返したい、そんな一冊だと思いました。


Posted: 2015年7月 7日 18:51 | コメント(0)