DMCラボ・セレクション 〜次を考える一冊〜
- MONTHRY ARCHIVES

僕個人はコピーライティングや映像の企画を中心に、コミュニケーション全体のプランニングをなりわいにしています。たしかにコピーも企画も大好きだけれども、さすがに好きなことだけ!を仕事にしてるとは言い切れません。ある日ツイッターのタイムラインに流れてきたこのタイトル『スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営』(日経BP社)が、あまりに潔く、そそられたので、読んでみることにしました。

スノーピークは、いま世界中から注目される日本の地方発アウトドアメーカー。好きなことだけ!を仕事にするってどういうこと? そんなこと本当にできるの? 誰しも疑問が生じるところかと思いますが、結論から言うと、どうやらできるみたいなのです。とてもシンプルで美しい思想がそこにはありました。キャンプに全く興味のなかった僕が、気付けばすっかりスノーピークファンになってしまったのです。

マーケティングはしない。「好き!」を競争力にする戦略


スノーピークの社員は、社長を筆頭に、年間何十日もキャンプするほどの熱狂的なアウトドア愛好家。メーカーである前に、突き抜けたユーザーであるからこそ、ユーザーがどんなキャンプ用品を本当に欲しいのか?アウトドアユーザーにとっての感動とは何なのか?が分かるそうなのです。


スノーピークは海外でもビジネスを展開しているので、世界各地のアウトドアメーカーの経営者と話す機会があるが、自分よりもキャンプの泊数が多い人にはいまだに会ったことがない。そんな私が社長としてシビアにレビューして、開発陣も自分たちのほしい製品をきちんと作る。自分たちで徹底的にキャンプをしながら製品を開発しているからこそ、強風でもびくともしないテントができるし、徹底的に使い勝手のよいギアが生まれる。ここに他社との大きな違いがある。(P28)


市場や競合の状況に対してどう手を打つかではなく、ユーザーである自分たち自身が欲しいと思う、まだ世の中にない製品をつくり続ける。山井社長の「マーケティングはしない」という、一見戦略とは無縁の断言は、「好き!」を競争力にするという骨太な戦略の表れなのだと思います。

これは広告づくりに置き換えれば、いい広告をつくるには、その商品をまず好きになることが何より大切、ということだといえるのではないでしょうか。好きになった経験があるからこそ、生活者の心が動くポイントが分かる。当たり前といえば当たり前ですが、意外とできていない場合もあるかもしれません。自戒も込めて。

まさかの永久保証。


そんなスノーピークのものづくりを象徴するのが、永久保証、です。製造上の欠陥にまつわることであれば、期限は一切なく、いつまででも保証が効きます。他社メーカーではあり得ないようなことを実現した裏側には、山井社長の強い意志があります。


私がユーザーとしてアウトドア製品を使うとき、「嫌だな」と感じるケースは大きく分けて2つある。1つは製品が壊れること。もう1つは使い勝手が悪いこと。そして、ユーザー目線に立って「そんなものづくりはしない」と決めている。私はこの考えを顧客にしっかり伝えたいと思っているが、「強固に作っている」「革新的な製品だ」とどれだけ言っても、なかなか伝わらない。むしろ差別化するには「永久保証つきだ」と短い言葉で完結に表現したほうが顧客にとって分かりやすい。(P57)


自らもユーザーの立場に立てば、保証が1年や2年で切れてしまうのはおかしい。ユーザーにとことん誠実に向き合うという精神を貫いた結果生まれたサービスが、永久保証なのです。それは単なるお客さまへの奉仕ではなく、スノーピーク品質の価値をたった4文字で強烈に訴求する、優れたコピーだとも思います。

全ての源はミッションにある。


好きをエンジンにしながら、明快な行き先を持つのがスノーピークです。それが「自然志向のライフスタイルを提案し実現する」というミッションステートメント。ミッションといえば、崇高な言葉は存在するものの実際に社員がその言葉を意識して働いているかといえば、そうではないという企業も多いのではないでしょうか。スノーピークは全く違います。


もし、「目指すべき方向がはっきりしていない」「経営理念があるけれど、社員はほとんど信じていない」「ミッションを額に入れて飾っているが、社内で重視していない」といった会社があるとしたら、あまりにも、もったいない。(P12)




企業である以上、売り上げがアップするかどうかは経営者として最後には考えなければならないが、それ以前に社会的に意義がある事業を行っている意識がスノーピークにはある。この思いを社員と共有することが、仕事への高いモチベーションの維持につながっている。(P36)


自然と人をつなぐ。現代社会で生きる人たちが、自然の中で人間らしさを取り戻すお手伝いをする。その大きな志に共鳴した社員が力を結集し、日々新しい製品やサービスが生み出されているのです。強い覚悟のもと生み出されたミッションがあるからこそ、多少の市場変化に惑わされず、スノーピークはスノーピークらしい価値を生み出し続けることができるのだと思います。

さて、「好きなことだけ!」を仕事にするとは何なのか? 本稿ではその入り口だけご紹介させていただきましたが、本書にはスノーピーク経営の極意が実に惜しみなく書かれています。ユーザーとの交流、地場産業との関わり、販売の仕組み、その全てがミッションに基づいて展開されていることに驚かされます。好きなことだけを仕事にするという自由の裏には、大きな責任感と徹底的な追求があったのです。経営やマーケティング好きの方はもちろん、いま一度仕事の意味を考えてみたい、という皆さんにも、本当にオススメの一冊です。


Posted: 2017年2月23日 12:04 | コメント(0)