DMCラボ・セレクション 〜次を考える一冊〜
大木 天馬 / Temma Ohki ARCHIVE

『戦略がすべて』-24の方程式-

Book reviewer: 大木 天馬 / Temma Ohki

今回は瀧本哲史著『戦略がすべて』(新潮新書)を取り上げます。以前『ゼロ・トゥ・ワン』を取り上げた時に少し触れましたが、彼は中高の同級生です。当時はいじられキャラでしたが既にとてもクレバーで、今こうして活躍しているのもとても納得です。
東京大学法学部を出てすぐ助手になった後マッキンゼーへ、現在は京都大学客員准教授かつエンジェル投資家です。本人いわく本業は投資家の方とのこと。既に『僕は君たちに武器を配りたい』『武器としての決断思考』など、いくつもの書籍を刊行しています。

自らが戦略を考え、磨くためのツール


投資家をしているぐらいなので、がっつり資本を持っているのでしょうし、「自分が投資した案件は、必ず成功させなくてはいけない」をモットーにしているとのこと。そこまでの言い切れる男の語る戦略とは何か。

本書は、以下の章立てで具体的な昨今の事例を紹介・分析しながら24の「方程式」として戦略を示し、自らが戦略を考え、磨くためのツールとなっています。


I ヒットコンテンツには「仕掛け」がある
II 労働市場でバカは「評価」されない
III 「革新」なきプロジェクトは報われない
IV 情報に潜む「企み」を見抜け
V 人間の「価値」は教育で決まる
VI 政治は社会を動かす「ゲーム」だ
VII 「戦略」を持てない日本人のために

 

前書きはありません、I章からいきなり本題に入ります。巻末のVII章が前書きと後書きを合わせたものに近く、そこで彼の戦略の考え方が示されています。

 


つまり、戦略を考えるというのは、今までの競争を全く違う視点で評価し、各人の強み・弱みを分析して、他の人とは全く違う努力の仕方やチップの張り方をすることなのだ。(P.245)

 

この思想をベースに示されていく、どの方程式もそれぞれ興味深いのですが、私が特に共感したのはI章の「3.ブランド価値を再構築する-五輪招致の方程式」と、II章の「6.コンピューターにできる仕事はやめる-編集者の方程式」です。

 

五輪招致の方程式には、

 


プレゼンテーションにおいて、最も重要なのは、「聴衆が何を求めているか」ということである。そこから、内容と見せ方が決まってくる。(P.37)

 


「勝利の条件」は本質を見抜くことにある(P.38)

 

と、広告に携わる者としては、常に心に置くべき事が書かれており(なかなか周辺事情によって難しかったりもするのですが)、編集者の方程式に紹介されている

 


彼と書籍を作るときは、通常の書籍の作り方とは少し違う。まず最終原稿の倍ぐらいの原稿を作り、様々な想定読者にそれを見せる。その反応をもとに、内容の取捨選択を行うだけでなく、読者像の見直しなども行う。(P.71)


という、ヒットメーカーとして有名な編集者の、さすがここまでやるのかと思わせる手法はその姿勢からして学ぶべきと思いました。

変化をいち早く見つけ、未来を予測し投資を成功させる

 

瀧本氏自身の在り方、考え方として参考になったのは、ブルーオーシャン戦略にも類するが、もっと端的に強烈に表現した彼の好きな言葉や、

 


「楽勝でできることを、徹底的にやる」(P.95)

 

変化をいち早く見つけ、未来を予測し投資を成功させるために彼が行っていることです。

 


それは、イノベーション、さらに言えば、資本主義というものは、少数意見が、既存の多数意見を打ち破り、新しい多数意見に変わっていくプロセスにおいて最も大きな価値が生じるからである。(P.108)

 


だから私は自分の身近にすでに起きている小さな未来(可能性)をたくさん持っている・知っていることが極めて重要だと考えている。(P.157)

 

情報が爆発しその取捨選択が必須となった現代に、自分に都合の良い意見ばかり拾ってしまい真実を見誤らないようにすることは、大切な戒めと私も考えていましたが、彼は更に一歩進め、

 


むしろ「逆をとる」、すなわち自分の仮説と逆の考え方や事実を探し、それがどの程度信頼できるかという、反証的な視点で確認していく。(P.148)

 

ここまでやることで、これから起こるイノベーションを見いだし、投資でも大勝ちしていけるんですね。

個人的には以下の例が、具体的に誰を頭に置いて書いているのかが容易に想像できてニヤリとできました。

 


「同じ部活の人は同じようなキャリアを歩んでいる」(P.186)

 

でも、親が自営かそうでないかとか、もう少しいろいろな要素があるんじゃない?とか、あいつは反証になるよな、などとちょっと突っ込みを入れたくもなるのも同級生の業。

彼いわく、本来読書とは著者と意見を戦わせる格闘技であり、この書への批判も歓迎と巻末にも書いてありますし、今度肉でも食べながら他の章含め意見を戦わせてみたいと思います。


Posted: 2016年4月21日 10:26 | コメント(0)

ここ数年、テレビ東京が元気です。
過去は平均視聴率が他局に比べ低く、私自身も、以前まではアニメとゴルフとワールドビジネスサテライトが思い浮かぶばかりでした。また、例えば重大事件や事故が起きた際、他局では特番が組まれても、テレ東だけは何事もなかったようにアニメを流し続けていることがネットでネタにされるなど、独特のポジションのニッチなテレビ局というイメージを持っていました。

しかし最近は、随分7chを見る割合が増えました。映画にもなった「モテキ」(ブルーレイ持ってます!)、「孤独のグルメ」などは大好きで、地元の店が紹介された時は大喜び。選挙特番も、池上彰さんの容赦ないツッコミが楽しみで見るようになり、実際に2014年の「池上彰の総選挙ライブ」は民放の選挙特番の視聴率トップになりました。
こんな元気のあるテレ東の企画の秘訣をまとめた本が、今回紹介する濱谷晃一著『テレ東的、一点突破の発想術』(ワニブックス)です。 


予算がないなら、アイディアでカバーする

 

著者の濱谷晃一さんは、テレビ東京のドラマ制作プロデューサーで、「俺のダンディズム」「ワーキングデッド」「太鼓持ちの達人」など、異色のドラマを手がけられています。
僕も帰宅後テレビをつけて、「太鼓持ちの達人」を偶然目にして思わず引き込まれてしまったことをよく覚えています。

そして本書には、テレ東は制作予算が他局より少ないという記載が散見されます。広告会社的に言えば、ネット局数が少なく、視聴率も低め(だった)局には、どうしても獲得できる広告料が少なくなりますし、そうなると必然、制作コストも掛けられません。

 


「予算○○万円と聞いて、他局のプロデューサーが『そんな予算じゃ番組は作れない!』と言ったのに対して、テレビ東京のプロデューサーは『そんなに予算があったら、使い道がわからない』と言った」(P.14-15)

 

 例えば、「Youは何しに日本へ?」は、成田空港で来日した外国人をつかまえて話を聞き、外国人と日本の関連性を見つけ出しストーリーにする、海外に行かない海外バラエティー。通常の海外バラエティーで掛かる渡航費用はゼロです。その代わり、気の遠くなるような取材の数で稀にある面白いストーリーを見つけ出して番組にしているのです。


常にアイディアを出し続けなければならない人は、出すためのメソッドを幾つも持っています。そんなメソッド、ノウハウのいっぱい詰まったこの本の章立ては以下となっています。

 


テレ東のアイディア第一主義
アイディアに年功序列はない!
テレ東的、無理やりアイディア量産! 7つの秘訣
企画に「差」をつける7つの「さ」
「ない」から生まれるナイスな閃き
テレ東の注目Pに聞く発想術
偏差値29からのテレビプロデューサー

 

私も、アイディアの掛け合わせによる企画発想術は、行き詰まった時しばしば使っていたのですが、「テレ東的、無理やりアイディア量産! 7つの秘訣」の章には「なるべくかけ離れた2つのアイディアで掛け合わせる」「片方のアイディアを固定してもう片方にいろいろなものを掛け合わせて発想する」など、より効率的に発想するための大切なコツが記されています。

予算が限られていることも一つの制限ですが、あえて制限やルールを設けた方がアイディアを出しやすくなりますね。

偏差値29から一浪で慶應・早稲田に合格

 

更に「テレ東の注目Pに聞く発想術」の章では、「モヤモヤさまぁ〜ず」の伊藤隆行さんをはじめとする、テレビ東京でヒットを飛ばすプロデューサー6人にインタビュー。

テレビマンとして何をしたいかが分からなかったという、新人時代の伊藤Pが
「誰でも99%は凡人だ。でも1%の自分の中の天才を信じろ」(P.150)
という上司の言葉で吹っ切れた、など、身近な人だから聞けるエピソードが記されています。著者の発想術だけでも素晴らしいのに、そこに更に6人の発想とエッセンス、企画書の書き方・通し方まで知ることができるんですから、この本お得感半端ないです。

そして「おまけ」の最終章は、高校時代偏差値29から一浪で慶應・早稲田に合格したエピソードと、テレ東に合格した「"一点突破"の就職活動術」。

 


「自分の経験や選択をすべて志望動機に集約させること」(P.201)
これが理想の就職活動のプレゼンだ、というのに深く同意。私がOB訪問で志望動機を添削する時に指導することとほぼ一緒です。

 

各章の間には、「コラム 愛しのボツ企画」として、著者の考えたボツ企画が紹介されていて、クスッとさせられつつ、こんな企画も検討するんだ、そして諦めずこのような形でも日の目を見せるんだ、という執念に感心。

企画に悩む方は、自分の発想法を一回整理するためにも役立ちますし、発想法以外にも、ポジティブに仕事を進めていくため役立つ考え方・心構え・習慣が至る所にちりばめられています。面白くて一気に読めてしまうので、ぜひ手に取ってみてください。


Posted: 2015年7月24日 00:36 | コメント(0)

今回は、アンドレア・コーヴィル/ポール・B・ブラウン著『レレバンス・イノベーション』(日本経済新聞社)を取り上げます。
原題はシンプルに『Relevance』です。関連性、と日本語では訳されることが多いですが、本書の中では「関連性」のほかに「自分事化」「つながり」「適切性」など、その時に応じてふさわしい日本語を使いながらレレバンスについて語っています。

ハワード・シュルツは、スターバックスの店内からコーヒーの香りが失われていることに気づいた

レレバンスという言葉は、デービッド・アーカー教授も著書『カテゴリー・イノベーション ブランド・レレバンスで戦わずして勝つ』で使っています(この本の原題は『Brand Relevance』)。
アーカー教授の「ブランド・レレバンス」とは、商品カテゴリーとブランドの関連性を示しますが、本書で言う「レレバンス」は、生活者と商品やブランドが、さまざま形でつながることを意味します。

最近はエンゲージメントという言葉を使って、商品やブランドと消費者のつながりを重要視し、指標として考えていくことが一般的になってきましたが、レレバンスはつながりをもっと広く捉え、「商品やブランドが、その人が生きる上で重要な意味を持つこと」を指します。
重要な意味を持つきっかけや理由は、もちろん色々あります。本書では、その色々なきっかけや理由を、主観的なものと状況によるものに分けて考えていきます。

主観的なものは、以下の4つに分類し、表紙にもある「レレバンス・エッグ」というモデルにしています。

■理性
価格が安い、性能が十分、近くの店で買えるなど、製品の特徴を合理的に判断する役割が理性です。理性によるつながりから、レレバンスが始まることが多くあります。

■感覚
商品の手へのなじみなどの使い心地、あるいは店の匂いやBGMなど、五感に代表される要素です。安心感や癖などもこのカテゴリーに入ります。
米スターバックス会長のハワード・シュルツは、店からコーヒーの香りが失われていることに気づき、様々な合理化の結果スターバックスがぬくもりのある近所の店ではなく、ただのチェーン店になってしまっていると指摘するエピソードに代表されるように、「感覚」とは過小評価されがちな要素です。

■協調性
人とのつながりや周囲との共通認識のことで、自分が所属する集団(会社や部署など)にふさわしい格好をする、時代に合った服装をする、肩身が狭いのでたばこをやめる、自分の所属する自治体や趣味の団体に貢献する、などの行動に代表されます。

■価値観
倫理・道徳・信条など、一人一人の持つ判断尺度を指します。ブランドに対するイメージや、環境を大事にする企業に対する共感度など、製品そのものに直結する要素もあれば、十代の若者が抱く反抗心なども含まれます。

そして、レレバンスが生まれるもう一つの要素である「状況」は、以下の3つに分けられます。

■コンテンツ
レレバンスを伝える、コミュニケーションを構成する要素。ウェブやその他のメディアにおける文章・画像・動画・音声などの情報や、会話による口コミがコンテンツです。
著者は、コンテンツの形態だけでなく「行間」としてユーモアなども一つの要素と考えており、先入観に囚われずユーモアあるコンテンツで「楽しい」銀行を印象づけた、米オクラホマ州のバンク・オブ・ザ・ウィチタズのインターネット・バンキング「レッドネック・バンク(田舎者銀行)」の例を挙げています。

■コンテクスト
空間と時間のことです。パーティーと野球観戦では着るものが違うように、場所やタイミングによりふさわしいものは変化します。ライフステージやライフイベントなど、ターゲットが置かれている境遇に応じたアプローチ方法を取ることでレレバンスを得ることができます。

■コンタクト
メッセージの発信源や、それを伝えるメディアとの接点のことです。自分の身近な人からアドバイスを受けるのと、知らない企業からダイレクトメールを送られるのでは受け取り方に大きな違いがあるように、また国内のニュースと遠い海外のニュースでは受け取り方が違うように、自分に関連のあるメッセージには耳を傾けやすくなります。

レレバンスを失わないように努力しなければならない


レレバンスの最終的な目標は、顧客に合っている製品、求めている製品を提供する、という基本的な、誰でも知っているビジネスでの成功方法です。しかし企業・組織は、効率化や上司への気遣い、社内調整などのさまざまな理由で、ブレがちです。レレバンスとは、顧客が望むものを提供するという理想に立ち返り、それを実現するための具体的なアプローチ方法です。

市場は常に変化するため、常に顧客とコミュニケーションを取り、レレバンスを失わないように努力しなければならないと著者は説いています。


レレバンスをなくしかけていないかチェックしよう
1 顧客の行動パターンを研究し、その結果に基づいた戦略を立てているか。
2 これまでに見たことがないビジネスモデルを、頭から否定していないか。
3 自分はなんでもわかっていると思っていないか。
4 心配性か。
(P134-135)


本書は多くの事例を紹介し、各章の終わりにはそのポイントと実践の方法ががまとめられています。
本格的なレレバンス調査は、1対1の聞き取り調査を大規模に行う必要がありますが、この本から考え方を学ぶことで、ソーシャルリスニングなどを活用してレレバンスをなくしていないかチェックできるでしょう。


イノベーションが成功するのはすばらしいアイデアが初めにあるからだと思われているが、これは間違いだ。
すばらしいアイデアは二番目に出てくるもので、イノベーションの本当の源は、すばらしい顧客インサイトにある。(P42)


どんなにすばらしいテクノロジーを使ったイノベーションであっても、顧客のニーズに合わなければヒットしません。

イノベーションといえば、電通グループの企業理念は「Good Innovation.」ですが、
成功するイノベーション≒Good Innovationを実現するには、本書でレレバンスによるアプローチを知ることは有効でしょう。


Posted: 2015年1月 7日 22:20 | コメント(0)

はじめまして、DMCラボの大木天馬です。営業・システム・デジタルプロモーションなどを経て、現在はまた営業の立場でデジタル系の業務を行っています。

今回取り上げるのは「ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか 」(NHK出版)。主著者はペイパル創業者、ピーター・ティールです。

シリアル・アントレプレナーの視点・思考が学べる絶好の書


ピーター・ティール氏について説明すると、ペイパルを創業し、その後ライバル会社のイーロン・マスク率いるXドットコムと合併した後イーベイに1.5億ドルで売却。その資本を基にベンチャーキャピタリストとして最初期のフェイスブックへ50万ドル投資し、10億ドルを回収。他にもLinkedInやYelp、Quoraなどの成長中の企業にも投資を行い、成功を収めています。
彼だけでなく、他のペイパル出身者も次々と会社を立ち上げ(前述のイーロン・マスクのテスラ・モーターズ、ペイパル社員3人で立ち上げたユーチューブなど)、成功させています。
次々に新ビジネスを立ち上げては成功させていくペイパル卒業生のことを人々は「ペイパル・マフィア」と呼び、彼らの起業の際にはそのほとんどに出資しているティールは、ペイパル・マフィアの親玉的存在です。

この「ゼロ・トゥ・ワン」は、ティールが母校のスタンフォード大学で行った起業の講義をまとめたもの。
たまたま10回連続でじゃんけんに勝ったような運だけの成功者とは違う、シリアル・アントレプレナーである彼の視点・思考を学ぶことのできる絶好の書です。
かつ、つい先月、英語版・邦訳版が世界同時発売されたという珍しい書籍で、翻訳の時差もなく最新のシリコンバレーの息吹に触れることができます。

そして偶然にも、序文を書いている京大准教授の瀧本哲史くんは私の中高大学の同級生。
「生きている人の本の推薦はしない主義だが、この人は別」などと言って、熱い文章を寄せています。

そんなご縁もあり、広告の本筋とは少し違うテーマですが、私のようなデジタル系の業務では彼らの視点を学ぶことも重要、ということで取り上げてみます。

常に隠された真実を見つけ出そうとする探究心と常識を疑い続ける心


ティールの言葉は明快、かつ強烈です。
この書はまず、


「採用面接でかならず訊く質問がある。『賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?』」
(P.22)


から始まります。

これこそ、強い企業のあり方、ビジネスへの姿勢など、全てに通じるティールの根本にある考え方です。

彼の経営するペイパルはドットコム・バブルをくぐり抜けて生き残った企業。
最低100万ユーザーを獲得しなければ軌道に乗らないという計算の中、広告での集客に限界を感じ、新規加入者とお友達紹介者にそれぞれ10ドルをプレゼントするという斬新なプロモートを実行。ドットコム・バブルがはじける直前にそのための資金調達をやり切りました。その後のペイパルについては皆さんご存じの通りです。

ドットコム・バブルが崩壊した後、シリコンバレーに居残った起業家が得た教訓として、ティールは以下の4つを提示しています。


「1.少しずつ段階的に前進すること」
「2.無駄なく柔軟であること」
「3.ライバルのものを改良すること」
「4.販売でなくプロダクトに集中すること」
(P.40-41)


また、人の集め方など、起業の際の実践的な考え方もティール流は説得力があります。


「20人目の社員が君の会社に入りたいと思う理由はなんだろう?」
「グーグルでもほかの会社でもより高給でより高い地位につける人が、20番目のエンジニアとして君の会社を選ぶ理由はなんだろう?」
(P.163)


確かに、大切な真実を見つけ、そのビジョンをシェアしてビジネスにすることは、社員の使命や夢、情熱の元、そして連帯感をつくり出す一番の早道でもあります。

常に隠された真実を見つけ出そうとする探究心、人の常識を疑い続ける心。
このティールの基本姿勢が、新しいビジネスを成功させるための非常に強力な武器であることは間違いありません。
例えば、先ほど挙げた4つの教訓。納得しちゃった人、それじゃゼロから1は生み出せません。

「シリコンバレーの常識」でしかないとして、ティールはその全てを否定しています。
ティールがカウンターとして示す原則はこちら。


1.小さな違いを追いかけるより大胆に賭けた方がいい
2.できの悪い計画でも、ないよりはいい
3.競争の激しい市場では利益は消失する
4.販売はプロダクトと同じくらい大切だ」
(P.41)



隠された真実を自分の目で見いだすことこそ本当のティール流


強烈な思想を持つティールだけあって、この書の中にはにわかには同意できないような考えもありました。
例えばリーンスタートアップも一つの起業の良い方法であると思いますし、起業後全く違うビジネスにピボットしてから大成功した友人も私は知っています。また、社員がスーツを着ていたって、投資に値する企業もあるでしょう。

われわれも彼の言葉をそのまま飲み込むのではなく、それすら疑ってかかり、変化する真実、隠された真実を自分の目で見いだすことこそ本当のティール流、この書から学ぶべき思想ではないでしょうか。

余談ですが、ティールはSFとファンタジーが大好きで、ペイパル社員の必読書が「クリプトノミコン」というSF書だったり、現在経営している企業も「パランティーア」、ファンド名は「ミスリル」、そしてこの本にも指輪物語の歌の一節が引用されていたり、「王の帰還」という章があったりなど、特にロード・オブ・ザ・リングの世界がお好きなようで私と趣味が完全に一致。一度話してみたいものです。


Posted: 2014年10月28日 14:21 | コメント(0)